Runaway train

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嘘だろ、まさかそんなはず。
そう思っていた俺はどこへやら。今目の前の光景にただただ口を開けて驚くことしかできない。


「行くしかないわね」

「監督?…どこに?」

「デートの待ち合わせ場所によ」

「は?」


歯磨きに行くとみょうじさんがこの場を去ったのを目で追っていると、ふいに監督が声を張った。


「行く?行くわよね」

「お、おう」


そう押された俺は今、みょうじさんと彼氏らしい男の待ち合わせ場所が見える草村に監督と2人で潜んでいる訳だ。
そして、たった今来たみょうじさんの私服の驚異的可愛さに心が打たれると共に、周りが有名人だと騒ぐ中をすぐに手を取り合って去った彼らに、身動き一つとれない状況である。
それにしても、相手の男、芸能人に専ら疎い俺でもわかる、新人売れっ子のモデルの黄瀬とかいう男だ。
キセキの世代とかいうのらしいし、なる程、監督が食いつく訳だ。


「日向くん、」

「……」

「日向くん!」

「お!おう、監督…」


大声で名を呼ばれ、ようやく現実に引き戻される。
俺が正気に戻ったのに安所した監督は、鞄から携帯を取り出し、手早くどこかへ電話を掛けだした。


「あ、小金井くん?今すぐバスケ部のみんなに召集かけて。集合場所は日向くん家ね」


ピッと一方的に電話をきって俺の方を振り返ってほくそ笑む。


「監督、」

「さー日向くんを励ます会を開くわよ!早速買い出し行きましょうか」


勢いよく腕を掴まれ、颯爽と草村を出る。
男女が手を取り合って草村から出てきたとあって、周りの人間は奇怪なものでも見るかのように視線を寄せたが、監督はさして気にしていないようで、そのまま足を進めた。
16|04[盗み見]

 

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