Runaway train

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ああ俺、初っ端から先輩の友人に嫌われたらどうすんだ。そう今更反省してもあの時の衝動は抑えられなかった。
先輩がアイス食べながら他の男と笑い合ってるのが悪い。この前俺にちゃんと好きって言ってくれたじゃないスか。
そう腕を引いて歩いていると、ふいに俺の顔を覗き見るように上半身を乗り出した彼女が小悪魔の如く笑った。


「黄瀬くん、」

「何スか」

「もしかして嫉妬してくれた?」

「しちゃ悪いんスか」

「いやー、嬉しいよ?」


そう手を握り直して、横を歩き出した先輩は、心底楽しそうに微笑んだ。


「それにね!あの2人絶対両思いだよ!」

「え?」

「リコもね、日向くん1人で誘うの恥ずかしいから私誘ったんだと思うよ」

「そりゃ2人きりにできてよかったっスね」

「本当にねー。だからありがとう黄瀬くん」

「それなら嬉しいっス」


なんて、あの日向って男絶対先輩が好きじゃん。そうあの笑みが物語ってたじゃん。あの人が可哀想になってきた。


「あ、先輩。今度結構大きな試合あるんで見に来てくれませんか?」

「うん!見たい!」

「じゃあ予定日とか場所とか詳しい事はメールするんで、予定がなければ見に来てほしいっス」

「わっかたー。楽しみだなー黄瀬くんのバスケ」

「そんなに楽しみにされたら、練習せざるを得ないじゃないっスか」

「そうだね。頑張ってー」

「はいはい」

「あ、黄瀬くんもう私ここで…」


早くも駅について、先輩が手を離そうとしたのを少し力を入れて制止する。


「ダメ、今日こそは送る」

「だってもう遅いじゃん」

「だからっスよ。先輩、俺を子供扱いし過ぎ」

「別にしてない」

「してる」

「んー、」


上目使いで睨んだって駄目、ってこんなこと前もあったような。まあ、兎に角駄目。


「黄瀬くん」

「ん?」

「好き」

「もうその手は効きませんよ」

 
勿論可愛いですけどね。余程のことがない限り今の俺は出し抜けない。


「じゃあ、」


さあ次はどんな手で来るんだろうか。まあ余程のことがない限りは今の俺の無敵艦隊は、


「涼太」


やぶれていまう。のをギリギリで抑え、先輩を抱きしめることで溢れそうなものを押し込めた。


「ちょっと、反則…」

「効かなかった?」

「いや効いた。効いたっスけど、やっぱ送りたいから」

「いいよ」

「え?」

「いいよ。いや、お願いします」


抱き締めた状態の彼女を引き離し、肩を掴んで向き合い、目を合わせる。柔らかく、且つ恥ずかしいのか少し顔を赤らめて笑う彼女に再度ノックアウトされかける。


「うわー、嬉しいっス!」


そうして送った彼女の家は、至って普通の家で、帰り際強引にキスをして、満足して俺は帰った。
20|05[か細い手を引く]

 

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