Runaway train

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なーんてね!馬鹿にすんじゃねぇよ!誰かがこの倉庫内には誰もいないって勘違いして外から閉めても大丈夫なんです、そこの奥さん!


「あああ!どうしよう高尾くん!出れないよ!」

「まあ落ち着け水玉ぱんつ」

「水、玉…!?…今日は違 い ま す!!というか何でさ!これが落ち着いてられるなんて、高尾くんのことこれから『ア』ホで『し』ょうがない『高』尾、略して『アシタカ』って呼ぶよ!容赦なく呼ぶよ!」

「寧ろ光栄だわ!俺ヤックル大好きだもの!初恋だもの!」


つうかアホでしょうがないのはそっちだっつの!何たって俺らには鍵がある!みょうじが握りしめる鍵がある!ってあれ?


「鍵穴がねえ…」


嘘だろ、鍵穴がない!?


「いやまだ!」


普通は鍵が無くても内側からなら鍵が開く仕様だろ。何で俺はこんな単純なことに気付かなかったんだ、こりゃマジでアホでしょうがないわ。
そう思って、目をかっ開いて探す。試合中でもなかなか見せない集中力だ。だが、いくら探してもそんな箇所は、


「ない、だと…!?」

「…この倉庫、内側から鍵が開かない仕様なんだよ」

「はああ!?嘘だろ!何その特殊仕様!?その仕組みにして何かメリットあるか?凡人の俺には理解できない物なのか?そもそも何だよこの倉庫、肝心の校庭からえらい遠いし、更には外側からしか鍵の開け閉めができない?ふざけんなよコラ!いい加減にしやがれ!!」

「まあ落ち着くんだ、アシタカ」

「これが落ち着いてられるか!」


まるでさっきと逆じゃねえか。でも、もう出る術はないだろ。俺らは、終わったんだよ。


「私は気付いたんだよ。あれを見たまえ」

「あれ?」


俺は、指差された先を見た。


「窓!そうだ窓!」


俺としたことが、まだ窓があるじゃないか。冷静になれ、俺。ポイントガードの仕事は、いつも冷静に周りを見ることだろう。


「いっけええぇ!」


特撮ヒーロー並みの気迫で窓の鍵に手を掛ける。が、開かない。何で!何でなんだ!?


「…錆びてるね。しかも全部」


つくづく俺らは神やら仏やらに見放されているのではないか。携帯は教室、窓も割るわけにはいかない。俺らは、閉じ込められたのだ。


「…この時間が終わって、誰かが道具直しに来るまで待ってような」

「うん」

「それで女子が来たらお前、男子が来たら俺が先に出て、残しは時間差で出て行く。これでいいな?」

「ガッテン承知」

「よし、いい返事だ」


その時の俺らの気持ちと言えば、完全にシンクロしていたと言えるだろう。俺らの間には、不思議な友情が芽生えていた。

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