どうも、黒子テツヤです。先ほどのラーメン店をあとにし、例の公園に向かう傍ら、僕は彼女、みょうじなまえについて考えました。 造りが柔らかく、可愛らしい顔立ちで、体は普通の女の子と何ら変わりない緩やかなシルエットで、ついでに平均より細めで、例えるなら桃井さんや監督より身長が低い。 言ってしまえば、どこにでもいそうな女の子、そんな彼女の、どこに監督が反応する点があるのか不思議でなりませんでした。 いえ、正直に言ってしまえば、見るからに平凡そうな子が、僕なんかと同じような評価ではなく、特別な、火神くん達のような評価を受けたことに嫉妬していました。 「あ!おーいなまえちゃーん!」 公園へと近付き、仲良くシーソーをするみょうじさんと、先輩たちの知り合いらしい二人の、見るからにチャラそうな方を見つけるなり、監督は大きく手を降って声を張ります。すると、こちらに両手で小さく手を振り返したみょうじさんと自分の名前は呼ばれなかった事に対して文句を言うチャラい方を見るなり、監督はそちらに向けて走り出しました。続けてため息を吐いたり文句を言ったりしながらも、後を追う一同を、見ているだけだった僕に、声を掛けられます。 「どうした?黒子」 「いえ、なんでも」 「じゃあ行くぞ」 火神くんに声を掛けられ、僕も走ります。ちょ、火神くん速すぎなんですけど!…火神くんより少し遅れて、そこにつきました。 ところで、高尾くんと真面目な方はどこへ行ったんでしょう。 「じゃあ早速、そこのリングに入れてみてくれる?」 「あ、はい」 先輩たちは反対側のリングやら、遊具で遊んだりするらしく、一斉にバラけましたが、一年生はみんなみょうじさんを見るようです。まあ、僕もめちゃくちゃ興味ありますから、同じくですけど。 どこから取り出したのか知れないボールを、みょうじさんに渡し、期待に満ちた表情をする監督に対し、みょうじさんは絶えず笑顔でしたが、心なしか不服そうでした。 「さあ、投げて!」 なかなか投げないみょうじさんでしたが、ついに意を決したようで、深呼吸し、投げます。 バンッ が、ボールはやや外れました。ほら彼女、僕と同じ、平凡な人間なんですよ。監督の見初めもたまには外れるんですね。 ところが、監督は急に険しい顔をして、睨みつけるようにボールを拾って来たみょうじさんを見ます。 「もう一回、お願い」 「え、…あ、あの、何回しても、期待には応えられな…」 「もう一回って言ってるの」 「…はい」 再度投げますが、今度は大きくはね返って、センターライン付近に落ちたボールを土田先輩が取り、すぐに走り寄ったみょうじさんに優しく渡しました。 礼を言ってその場から、監督に向けて話します。 「ほら、私運動ダメ…」 「何で、隠すの?」 「…はい?」 「何でわざと外すような真似するの?」 わりと大きな声は、一瞬にして遊びに夢中だった先輩達をもこちらに集中させました。 「…べ、別にわざとじゃないです。一生懸命して、これなんですよ」 「どこが?私の目を欺けると思わないことね!」 そう言う監督にみょうじさんは俯いて、僕らから表情が見えなくなりました。ところが、 シュッ 一瞬何がおきたかわかりませんでした。ですが確かに今、みょうじさんが片手で投げたボールは、綺麗にリングに吸い込まれていきました。 センターライン付近から、片手で、驚くべき所業に、皆がみんな目を開きました。 「私の人生を、否定しないで下さい」 小さい筈のその声は、僕には確かに聞き取れました。まるで泣きそうな、か細い声は、まるで助けを求めているようで。 「ほらなまえちゃん!あなた、キセキの世代並みの才能が…」 「相田、」 「何よ、宮野」 「お嬢は、太一さん以上に秘密多き人間なんだよ。相田もちょっとくらい秘密あった方が、男は興味出るもんだぜ」 「あっれー、何かあったんスか?」 と、その時、高尾くんと真面目な方が帰って来ました。 手に持っているのはレジ袋で、どうやら中身はアイスらしいです。 「バスケ部の皆さんもどうぞ召し上がって下さい」 「四分の一は太一さんの金で買った奴だからな。心して食えよ」 どうやら、上手く流されてしまったようです。 |