Runaway train

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考え出すと辛いだけだった。だから私は、考える事を止めた。

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集団の一人に腕を引かれ、乱暴に連れて来られた公園の小さな森の中。まだ日が昇っているとはいえ、そこは薄暗く、公園の遊具のある中心部には目に余るほどいた子供達も、こんな場所に入ろうとはしない。よってここには、こいつら4人と私だけ。


「さぁて、遊ぼうか。俺らと」

「おい誰からするよ?」

「ここは公正にジャンケンだな。俺は複数プレイも二人までという密かなこだわりがある」


最初は怖い人かと思ったものだが、気の許せる仲間と話す感じは至って普通で、そこらの男子となんら変わりない。私は少し安心した。
ここまでさほど抵抗もせずにホイホイついて来た私は、何をされても文句は言えないんだろう。でも逆に言えば、それは何をしてもいいってことではないか。と、私は考えた。


「(だから…、)」


バンッ

手に持っていた鞄を大きく振り、ニヤついていた男の一人の顔に当てる。見事くらった男はよろけ、情けなく尻餅をついた。


「ってめぇ!」

「ざまーみなさい」


今の私はすこぶる機嫌が悪いのだ。
ここまで馬鹿みたいにホイホイついて来たのには私なりの理由がある。この行き場のない苛立ちを何かにぶつけたかったのと、それが人の目につく場所じゃあ、学校に連絡がいくと面倒極まりないから。


「お前、自分の立場わかってんの?」

「漫画かなんかの主人公のつもりかよ?止めとけ止めとけ、この人数の男に勝てるかよ」


という、言い訳はただの言い訳で、私もわかる。ただの女が、こね人数の男をどうにか出来るはずはないって。


「(本当は…)」


何も信じれなくなってどうにかなってしまいそうだったから、この男達の言ったように、悲劇のヒロインにでもなったつもりで、こうして身投げしてみただけ。
苛立ちだってある、自分に対して。でも誰かに当たって発散する強さはないから、誰かに頼った。でもね、やっぱり怖い。今も後ろで腕を痛いくらい掴まれて、前は前でシャツのボタンをゆっくり外されていくのが、怖くてしょうがない。自分で追いやったのだけれどやっぱり、怖い。


「(助けて、)」


――…黄瀬くん…!

ほらこうして今も、彼を求めている。
 

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