Runaway train

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それから3日後のことだった。


「なまえー帰ろー」

「ごめん、職員室行って来るから、先帰ってて」

「わかった」


普段はリコは部活だから他の友達と帰るのだが、今日は先生から呼び出されたから帰ってもらう。その背中に手を振り、鞄はその場に教室を後にする。階段を下り、職員室のある一回にたどり着くと、長い廊下を進む。と、エントランスにさしかかった時。


「あの、すいません」

「うおわ…はい!」

「驚かせてすいません。みょうじさんという方を探しているのですが…あ、」


そう言う彼は、よく見れば黄瀬くん絡みで会ったことのある水色の男の子。こんなに近くにいたのに気付かなかった。


「…確か、黒子くん?」

「はい。黒子テツヤです」

「どうしたの?私に用事なんて」

「はい、」


彼は一瞬間を置いた。


「黄瀬くんの、ことです」


思わず私は息を飲む。二度と触れないようにと、この3日間心の奥底に沈めたものを一瞬にして拾い上げられた気分だ。良い気はしない。


「悪いけど、私には何も出来ない」

「僕はあなた達のことは詳しくは知りませんが、今起こっているのは確実にあなた絡みでしょう」

「起こっている…?」

「はい。説明するより見てもらう方が早いです。僕について来て下さい」

「え、ちょっと…!」


鞄、教室にあるんですけれども。

――――――――――
―――――――
――――

「ここです」

「…ここ?」

「はい。見たとおりです」


鞄は後で学校に取りに行くことにして、せめてもにと靴に履き替えさせてもらい、黒子くんに黙ってついて行けば、そこは公園。この時間帯に子供で溢れかえっているところといい、カップルもちらほらと視界に入るところといい、至って普通の公園であるが、ただ一つ特筆できる箇所があった。


「おいおい、5人を一人でめったうちだって」

「嘘だろそれ」

「そんな疑ってる暇あんならさっさと行くぞ、相手がへばっちまう前に」


ストバスのコートに、小さな人集りが出来ているところだ。そして私の腕を掴んで黒子くんが歩んで行くのも、そこだ。


「見てください」


一体何があるのだろう。
黒子くんの視線の先をフェンス越しに覗き、私は目を見開く。


「黄瀬くん…」


息をきらしてその場にへたり込む大の男5人の中、一人無表情でたたずむのは、汗一つかいていない黄瀬くん。その鋭い眼光は、飢えた獣を連想させた。


「この3日間練習に顔を出しません。やっと見つけたかと思えば、この荒れ様。これ、どう思います?」

「どうって…」


どうもこうも、私に何をしろと?私には何もできやしないのに。一体何を期待しているの。


「すいません。話だけ、聞いてくれませんか」

「説明するより見た方がって…」

「それとこれとは話が別です」


らしくなく笑った黒子くんは、ゆっくりと話しだした。

 

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