Runaway train

□…
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「よし、各自切りがいいところで休憩に入れ」

「はい!」


赤司の凛とした声が熱気にまみれた体育館中に響き渡り、皆それぞれ休憩に入っていく。
黄瀬もベンチに座って水分補給をしてると、横に無遠慮に青峰が座り、ニヤリと笑いかけてきた。


「今日は随分と調子いいじゃねえか、黄瀬」

「そうっすか?」

「顔が気持ち悪いのだよ」

「緑間っち、いつのまに来たんすか。てか気持ち悪いってなに?ひでえ」


いつの間にかやってきたらしい緑間。あの下睫毛の憎たらしい目でやたらと睨んできたので、黄瀬がたった今使っていたタオルを投げつければ、心底嫌そうに振り払われた。
無残に床に落ちたタオルを拾いに立ち上がり、背中越しに青峰の言葉を聞く。


「最近、携帯ばっか見てるよな。…さては、女がらみ?」

「……青峰っち、変なとこで勘が鋭いっすよね」

「返信がこないのか?」

「そう。てか、緑間っちがこういうのに興味持つの珍しい…」

「お前が女に自分からメールを送る方が珍しい」


言われてみれば、そうだ。今まで女に自分からメール送ったことなんてあっただろうか。覚えているかぎり、別れよう一言のメールぐらいな気がする。 青峰が黄瀬の背中を叩いた。


「前の奴とはもう別れたのかよ。あれ2年で一番美人だっただろが」

「ああ、そっすね」

「そんなお前がそこまで執着するって、今度のはどんな女だ?」

「照れたら"知らない"しか言わなくなる高一の先輩」

「年上?美人か?」

「ん〜美人だけど可愛いが勝つっすね」

「よし、会わせろ」

「たった今決まったっす。青峰っちにだけは絶対会わせない」


はあ?奪われると思って自信なくしてんのか?そうあからさまに挑発してくる青峰に、黄瀬が呆れ気味に向き直る。


「青峰っち手早いから、会った途端キスしたりしたら流石のアンタ相手でも俺、黙ってないんで」

「上等だ」

「こちらこそ」


試合見に来て下さい、なんて迂闊に言えやしないなと心に決めた瞬間だった。
青峰が気怠げに立ち上がると、今まで黙っていた緑間が急にはっと顔を上げた。


「黄瀬、」

「皆さん、」


が、被ってきた独特の声によって遮られた。黒子の声だ。
今日のおは朝占いでは蟹座はきっと下位だったんだろうな、と思いながら三人が黒子の方を向く。


「何だ?テツ」

「いや、もう休憩時間終わるので。赤司くんが怒りますから」

「だそうなんで、緑間っち、後でいいすか?」

「ああ、仕方ない」


そう言って各自練習に向かう。緑間は確かに気になるが、やっぱりメールの返信の方がその点で勝る。
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