Runaway train
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リングが軋む音が止む頃、キュッという音を体育館中に響かせて、着地する男、黄瀬涼太。
均等のとれた体格、整った顔立ち、それを引き立てる綺麗な金色の髪。
まさしく、絵に描いたようなその光景に、本日幾度も見ているにも関わらず、皆見とれ、手を止めるのが自然だった。
暫くして当の本人、黄瀬が歩き出したことを確認すると、他一同は大きく息を吐いた。
「黄瀬またダンクかよ。もう何発目だよ〜」
「今日の練習は一段と気合い入ってんな」
「てか様子おかしくね〜?おい笠松〜、ここは代表して何かあったのか聞いてこいって」
「うるせえお前ら!真面目に練習してんだから口出すな!」
今日の彼からは、いつもの体格に不釣り合いな子犬の様な笑みは消え、無表情の一言でしか表しようがなく、人を寄せ付けないオーラが滲み出ている。
と、歩きだした行き先はこちらだったらしく、黄瀬は笠松のすぐ後ろにまで来た。
「先輩、」
「うおお!黄瀬、何だ?」
「ははっ黄瀬お前、いつの間にキセキの世代の6人目まで真似できるようになったんだよ〜」
そう部員が気を利かせて冗談を挟んでも、ただただ無言で、何を言ってるんだと言わんばかりに見つめ返されれば、立つ背などない。
おかしい、いつもなら黄瀬は黒子の話題には特に楽しそうにくいついてくるのに。
「馬鹿野郎!」
「わ、悪い笠松、俺心折れたわ」
「先輩、」
「おお黄瀬!すまねえな」
「すいません。俺もう帰るっす」
「そ、そうか!また明日な!」
そう言って足早に出て行く黄瀬を横目に、笠松は溜め息を吐いた。
「ほんっと、どうしたんだよ〜!」
「女絡み、とか」
「うわあ、黄瀬ならありえそうでいけすかねえ」
そう頭を抱える一同のそんな読みは、強ち間違いではないのだと、今は誰も気付かない。
だから愛なんてない、