「見ろよ緑間。あそこ!」 「何だ青峰。どこなのだよ」 「ほら二階席の右端!あの可愛い子だよ」 「あれか、」 「そうそう!可愛いくね?俺もろタイプなんだけどよー」 「阿保らしい。次の試合に…」 「ん?どうした緑間、」 試合が終わって控え室に戻る際に、喜々として寄ってきた青峰を鬱陶しく思ったものの、指差す女を目を凝らしてまじまじと見れば、そんな煩わしさは吹っ飛ぶ。 あれは、この前黄瀬と帰った時に会った女だ。 「ああ。可愛いな」 「…は?熱あんのかよ。試合もう一つあるけどよ、お前でれんの?」 「熱などないのだよ」 額に当てようと伸ばされた手を振り払って颯爽と控え室に行くべく歩き出す。 後ろからああだのこうだの騒ぐ青峰の声が聞こえるがかまう間でもない。 21|05[か細い手を引く] |