次の日学校へ行くと、いつもは女子の溜まり場と化している俺の席には、クラスが別な筈の青峰っちが我が物顔で腰掛けていた。 遅刻常習犯であり、まだ余裕のあるこの時間に学校にいること事態不自然な彼は、ただでさえキツいその目つきを今回は更にギラギラさせているものだから、1on1で多少慣れているつもりの俺でさえ近寄り難い雰囲気を漂わせていた。 その効果あってか俺の机のある一体には誰一人として近づこうとさえしないのだから、有り難いのかそうでないのか。 普段俺がかなり適当に流していることにも気付いていないような鈍感極まりないイケイケ系女子達も、この時ばかりは危機を察知したらしい。恐るべし青峰っち。 そんなぼっちな青峰、略して青峰っちは、俺が入り口で未だに立ち止まっていることに気付き、ニヤリと厭らしく笑うのだった。 「よお、来たな。黄瀬」 「どこの不良っスか」 「それで、だ」 俺の素朴な疑問を受け流し、ダルそうに机に足を乗せた彼は、ただでさえ高い不良度を、更にレベルアップさせた。 「誰だ、昨日の女は」 「彼女っス。これ以上わかりやすい説明ないっスわ」 「詳しく教えろ」 全く意味不明な行動であるが、これは予想通りである。俺は、肩に掛けていた鞄を弄り、ある物を取り出す。 「はいこれ」 「あ?話を逸らす気か…、」 「この前頼まれてた物っス」 「い、いいのか?もらって」 「はい」 「返せって言っても返さねーぞ」 「言わないっス」 そう青峰っちに手渡したのは##NAME3####NAME4##の色紙。つまり、たった今話題となっていたなまえさんに昨日帰り際にお願いして、快く書いてもらったサインだ。 「礼を言うぜ黄瀬!この恩は一生忘れねーから!」 「そりゃどうも、」 こちらこそ、あっさり元の話題を忘れてくれてありがとう。 らしくなく子供のようにはしゃぐ彼は、ちょうど廊下を通った桃っちに気付くと大きく声を張った。 「さつきー!見ろよこれー!」 言うなり走り去ってしまった彼に周りは騒ぎ始める。どうやら一部始終を見ていたのだろう、いつもバスケ以外に執着を見せず、常にダルそうな彼がああもはしゃぐのは、一大事件なんだとか。ここでふと、今日も日本は平和だな、と感心してしまうあたり、俺も変わり者だ。 「さてと、」 今日一番の問題を回避できたところで、緑間っちにも物を届けにいこうか。渡した時にどうやってテンパるか、見ものだ。 俺は珍しく閑散とした机に鞄を放り、未だ騒ぎの収まらない教室を後にした。 |