Runaway train

□…
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「おい高尾、これ直してこい」

「え?酷くね先生!俺今からサッカーする気満々だったんスけど!誰よりも早くボール持って構えてたんスけど!」

「お前のルンルン気分なんか知るか、さっさと行ってこい」


そんな理不尽に最早抵抗する気も失せ、真ちゃんを誘っても一緒に来てくるれる気は毛頭ないらしく、観念して一人大荷物を抱えて倉庫に向かった。


「つかこれ、一人で運ぶ量じゃねぇよ。真ちゃんに振られただけで諦めるんじゃなかったわ」


ようやく念願の倉庫を前にして、肝心の事実に気付く。やべ、鍵貰ってねえ。
扉に手を掛けるも、開く気配はない。ひょっとしたらと思って横の窓を見たけど、全部鍵が掛かってる。
生憎、この学校は体育倉庫から校庭から遠めだ。こんな所に作るなんて嫌みとしか言えねえくらい遠めだ。帰るのは億劫だ。


「どうすっかな」


観念して校庭行くか、そう思って振り返った時、その瞳とバッチリ目が合う。


「みょうじ、さん」

「…高尾くんだ、パシリ?」


ちょうど倉庫に来たらしい、みょうじがいた。女子は確かテニスだったっけ。こいつも先生にパシられた訳か。昨日の今日で接触があるとかなにそれ、ドラマみてえ。つうかあれ?その手に持ってるのは、


「鍵!」

「え!?先生鍵くれなかったの?酷いね頼んでおいて、私なら発狂するね!全力で抗議するね!」


そう笑いながら、早速鍵を開けるみょうじは、どことなく笑みが暗い。無理してるような、そんな感じ。


「みょうじ、疲れてんだろ」

「え?どこが?」

「顔が。…差し詰め、自分の運動能力を隠して運動するの辛いとかじゃねえの?」

「高尾くんエスパー?」


そう笑って、開いた扉から倉庫内に入って行くみょうじに俺も後ろの大荷物を引きずって続く。重いったらありゃしない。



「これでも慣れたつもりだった。でも、高尾くんにバレるようじゃ私もまだまだだなあ」

「バカにしてる?」

「ごめんごめん!でもさ、私普通だよ。ただ小さい頃から鍛えられてただけ。ほら、キセキの世代の緑間くんとか、鷹の目の高尾くんとは全然違う、元々素質がある訳じゃない、ただの凡人」

「…俺の事知ってんだ」

「当然。寧ろこの位はこの学校で知らない人いないんじゃない?」


棚にしまいながらそう言うみょうじを見れば、どうやらお世辞も謙遜も言っているつもりはないらしい。自分を下げ過ぎだっつうの。


「お前、」


これはちょっと叱る必要があると思った。何でか知らないけど、こいつはこのままじゃなんかヤバい気がしたから。だけど、

ガタンッ

いつの間にか閉じていた扉から、そんな音がした。柄にもなくいきなりのそれにビビって、肩ビクってなって、次いで悪い予感が頭をよぎる。
多少距離のあるその扉に走り寄り、手を掛ける。


「…やっべ、」


開 か な い 。
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