Runaway train

□…
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目の前を歩く俺より頭2つ分程小さい彼女、みょうじについて思い出してみる。
クラスでは殆ど目立たない存在で、確か帰宅部だったっけ。先月席が近くなって、英語であったグループ活動で数回喋ったっきりだ。特に俺は女子と特別仲の良い男ではないが、その中でもトップクラスに関わりがない人物で。
兎に角俺が分かるのは、先程の華麗な跳び蹴りを炸裂させそうな人物ではない、という事。そもそも俺は今まで、映画や漫画以外でこんなアクロバティックな女見たことがない。
家についたら、半死状態になることが予想される訳だが、そんな状態でここまで色々考えるあたり、俺も随分肝が据わっているのだろう。いや、あえてこの状況だから真の力を発揮したというのか。
道を行くにつれ、一際目立つ道場が目に映る。そう言えばここ初めて通る道だっけ。そう思いながら通り過ぎようとしたら、肝心の彼女はその場に止まってしまうのだった。


「みょうじさん?」

「ここだよ」

「ここって?」

「ここ」


そう指指すのはその道場で。


「ここ道場、だけど?」

「…ここが私の家なの。正確には…この裏に別に家があるんだけど」

「はあああ?」


思わず住宅街ということも忘れ、俺は叫んだ。みょうじさんは自身の口元に人差し指を立てて、俺に静かにするよう軽く睨んで来たが、こればっかりはどうしようもない。
そんな中俺は、今までの疑問が全て片付いたような気がした。それなら、確かに辻褄が合う。


「…もしかして、それを隠したいが為に、俺をここに?」

「そうだよ!いつも隠して生活してるのに、高尾くんが絡まれてるから、つい倒しちゃったの!」

そんな必死に言われても困る。助けられてこんなことになるなら、あのままボコられた方がましだった、とは言い過ぎかもしれないが、俺はそんな結滞なことに巻き込まれたくはない。


「頼むよ!お前が道場の娘で実はめっちゃ強いんです、とか絶対言いふらさないからさ。だから、帰らせてくれよ。な?」


俺の精一杯の願いに、彼女は悲しそうに、だがきっぱりと言った。


「だめなんだよ」

「は?」


――…掟だから。
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