Runaway train

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「お!来たな!早速やるぞ高尾…いややっぱ無理、和成って呼ぶわ。異論は認めねえ!俺は苗字呼び苦手なんだ!」

「知らねえっスよ!いいから!好きに呼んでいいから!」

「よし、早速これに着替えて中に来いよ!着替えはそこの部屋な!いいか、ダッシュで着替えろ!」

「はいはい」

「返事は一回!」

「…はーい!」


若干ためらいつつ大きな門をくぐり、道場に行くと、ででん、と入り口で待ち構えていたのはみょうじのオヤジさんだった。相変わらず若く、青年らしさを保ったこの人は、口は達者だが、全て半笑いで全く迫力がない。こんなのが師範で大丈夫なの?という疑問で、昨日は小一時間程寝付けなかったものだ。
というか、みょうじといいみょうじのオヤジといい、みょうじ家は呼び方にこだわりがあるらしい。呼び方と言えば、ここはみょうじ家だから区別に苦労すんな。どうすっか。
そう悩みつつ、俺は指示された部屋に向かい、着替え、早速道場の主体の部屋に入る。と、目に飛び込んで来たのは、


「いらっしゃいアシタカ、部活後にお疲れ様」


柔道着みたいだけど、どこか違う、俺が今着てるのを俺よりはるかに上手く着こなしたみょうじなまえ。長めの髪はしばっており、学校の時の様な雰囲気は微塵もなく、なんかこう、ただ一言格好いい。


「まあそうなんだけどさ、お前は?もう終わったんじゃねぇの?」


昨日決めた条件通り、俺は部活が終わってからここに来た。他の門弟の人達はその間に終わるらしいから、俺は特別にその後個別で指導してもらえるらしくて。だから、こいつはもうとっくに終わった筈だった。


「基本が身に付くまでは私が稽古つけることになったの」

「それが罰な訳?」

「…まあ、大体そんな所。でもお父さん時々見に来るし、私も甘くないからそのつもりで」


なんだよ、その変な間。他にも何かある口だなこりゃ。でも、聞いても言わないのが目に見えてわかるから口には出さない。


「じゃあまずは走りから!行くぞアシタカ!」

「マジで!基本ってそっから!?俺さっきまで部活でめっちゃ走ってたんだけど!やっぱそう言うの通用しない?」

「通用しない!さあさあ行くぞ!」
 

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