Runaway train

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「…で、何で不機嫌なの?なまえちゃん」

「別に」


そう言うものの、絶対に不機嫌ななまえちゃをは、なんともまあ顔を俯いて、未だに先ほどのアイスを舐めながら、ブランコに揺られている。

『よし高尾、お嬢を頼んだ!』

そんな軽いノリでコイツを投げ渡してきた宮野さんは、現在アッチのストバスのコートで誠凛の部員と混じってゲームをしている訳だが、


「おい火神、素人相手にダンクかますとはどういう了見だ、あ?」

「俺、手抜くの苦手なんだよ!…です」


とまあ、今にも胸倉掴みそうなぐらいキレてて(しかも今日知り合ったばかりだろう火神相手に)、言ってしまえば結構本気でしてるから、誠凛で相手してる人も、8割ぐらいマジでやってんじゃねぇの?宮野さんやっぱ恐ろしいわ。


「…で、なまえちゃんは俺がアイス抱えて歩いてた間に一体何があったんだよ」

「聞きたい?」

「勿の論さ」

「そんなに?」

「(うっぜぇ!)教えて下さいな!」


すると満足そうに語り出したなまえちゃん。正直殴りたい。どうせ軽く避けられて終わりだろうけど、殴りたい。


「さっき、相田先輩?に、シュート打てって言われて、回避できないなーって思って仕方なく打ったの。例によってまあ、二本外したんだけど、…そしたら相田先輩、私が手抜いてたの見抜いて怒られた。やっぱ見る人が見ればバレるんだね」

「…そんだけじゃないんだろ?」

「…怒られてすぐ、カッとなって入れちゃった。しかもセンターライン?の近くから、入れちゃって驚かれた。なんとか太一くんが誤魔化してくれてた時に、アシタカと純介さんが帰ってきた」

「ただの運動神経いい女なんですは今更通用するとは思えねぇし。差し支えない程度の説明も難しいからな」

「…謝ってくる」

「よし、行ってこい」


不安そうだが軽い足取りでコートへと歩いていったなまえちゃんに手を振り、俺はブランコを立ちこぎ。やべ、数年ぶりのブランコ楽しい。ハマる。

しばらくして、うまく謝れたことが伺える晴れ晴れとした笑みでぴょんぴょん帰ってきたなまえちゃん。そして、手には何故か携帯。


「わかってくれた!すっごくいい人達!もうね、私惚れそう!」

「よかったな。今夜は赤飯決定だな。椿さん喜んで作ってくれんぜ」

「うん!アシタカも晩御飯食べてきな!どんと来な!赤飯食べな!」


全身で喜びを表現しようと頑張る姿には、椿さん似の整った顔で、ぶっちゃけ可愛いから、これが馬鹿力でスタミナ馬鹿だと思うと辛い。


「あ、あと私達、謙吾が寂しいって電話してきたからもう帰るけど、アシタカは誠凛のみんなと残る?」

「いや、帰る」

「そ。…太一くん!純介さん!アシタカも帰るってー!」


大声で叫んだなまえちゃんの声に、それぞれこちらにやって来る二人を横目に、なまえちゃんに、俺は後ろのポケットから携帯を取り出して声を掛ける。


「メアドとケー番教えて」

「あ、了解」


そういや知らなかった。
 

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