Runaway train

□8
4ページ/4ページ


「ただいまー…」


家に帰って、リビングに入るなり、おかえりと言ってくれるはずのお母さんはお風呂らしく、私何も言わずはリビング内の階段を上る。とそこで、妹の##NAME4##に私の腕を掴まれる。顔は私が父親にで##NAME4##が母親にであまり似てはいない、中二の妹だ。


「何で教えてくれなかったの?」

「何のこと?」

「とぼけないでよ!私知ってるんだから!今度映画主演なんでしょ?」

「そうだけど」

「ねえ、黄瀬くんと恋人役なんだよね?私を紹介してよ」

「私なんかじゃ無理だよ」

「何?私のお願い聞いてくれないの?…私のおこぼれで芸能界入ったくせに」


乱暴に払われた腕をまじまじと見れば、なんとも真っ赤に指の跡がついていた。


「私の方が断然可愛いのに、勉強も出来るののに、お母さん達からも愛されてるのに…なんでお姉ちゃんばっかり!」

「私ばっかりじゃないよ」


##NAME4##がまだ何か言い出そうなのを私は完全に無視して、階段を上り、部屋に入る。そして、しゃがみこむ。
確かに、私は##NAME4##のおこぼれで芸能界に入った。彼女がモデルになりたくて、オーディションに応募した時に、身近に比べる対象が欲しくて、卑下する対象が欲しくて、勝手に私の写真まで送られたのだ。そしてそんな彼女の思惑とは裏腹に、私が偉い人の目についた。
最初は断ろうと思った。でも演劇部だったという事もあり、演技にはすごく興味があって、女優だっていい、そう言われれば揺らがない筈はなかった。
結果芸能界入りしたのは私で、最初の売れなかった時期はまだしも、次第にいい役をもらえるようになると、##NAME4##はお母さんがいない時に、ああして私を目の敵にしだした。いつもなら受け流せるそれも、傷心しきった今日はこう、結構クる。
なまえは手がかからない子だもの、大丈夫よね。そんな言葉は小さい頃から何度も言われた。##NAME4##の言うように、お母さんもお父さんも##NAME4##が大事なんだと思う。
私も十分愛されてはいると思うけど。でもやっぱり寂しいと思うこともあって、そんな心の隙間を、


「なまえーご飯よー!」

「はーい」


知らぬ間に、黄瀬くんで埋めていたんだ。

 

#次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ