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□888。
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12月22日。
あと数時間で今日は明日になる。時計のメモリを追う俺に声が投げかれられる。


「プレゼント、何がいい?」

何の脈絡もないそれに対して『何のこと』か瞬時に考えついちまうほどに、俺の頭の中はそれで埋めつくされていた。
恋人と過ごす初めての自身の誕生日。異様に落ち着かない。

「…知ってたのかよ?」

アイツが俺の誕生日を知っていたことに驚く。
何て言おう?言い出そう?
いや、そもそも自分から誕生日を明かすなんて恥ずかしすぎやしないか?と、ここ数日もやもやとしていた胸の内は晴れたが。
拍子抜けと言うか…一気に緊張が解けてしまい、何か疲れた。

俺の言葉には「ん?まあ一応恋人だし?」とケタケタ笑い声が返ってくる。
(一応って何だ、一応ってよ)

俺の部屋。俺のベッド上でだらしなく寝転がる恋人。透けるような銀の髪がシーツの上に広がっている。

ニヤニヤと、いつも浮かべる意地の悪い表情で笑う瞳は蜂蜜色。ジャンと揃いのそれ。

だけど綺麗だとか好きだなとか、思うのはこいつに対してだけで。それに気付いてから、隣にこいつを置いてる。

「なあ?いんねぇの?プレゼントとか」

ほしいなら兄さんが買ってやんよ?と、一つしか違わない年をひけらかす恋人に被さるようにキスをした。
すでに何度も重ねているその行為を、余裕とばかりに恋人の舌は動く。それを絡めて、また絡まれて。
しばらくの間そうして、口を離した。


「う、ん…っ、何?もしかしてベタなこと言っちゃう感じ?」
「 、うっせー」
「ん、ぅ」


余裕ぶる赤い顔、荒い呼吸に興奮する。
それと同時に胸の中は幸せだなんて甘ったるい気持ちでいっぱいになった。

(覚えててくれた。それだけでいいだなんて、嬉しいだなんて、)
余計なこと言っちまいそうな自らの口を、目の前の五月蝿い口ついでに塞いだ。


happy?
birthday
ivan.
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