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□恋愛ピンク
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#3「闇版」





「……レンさま、起きているんでしょう?」

抱き枕の格好で腕の中に捕らえられたアイチは、ほんの少しだけ眠った。
目覚めたら戸惑うこともなく、普段よりも少しひくい声音で、問いかける。

くるりと体勢を変えて、正面からレンに向き合うと、頬にかかる紅髪の曲線を指先で辿る。

腰までをこたつの中に埋めているせいか、天井の高い部屋は肌寒いほどなのに、白い頬が仄かに染まっていた。

「きみは、……悪い子のアイチくんだね?」

切れ長の目が、す、と開く。
問いかけるレンは、今の瞬間まで眠っていたとは思えぬ明晰さで問うた。

「悪い子だなんて酷いです」

アイチは拗ねた口調で言うと、つん、と唇を尖らせる。

「違った?では、やらしい子のアイチくん」

「……ぅん。欲しがりの僕、です。あけましておめでとうございます、レンさま」

唇が重なりそうな近距離まで身を寄せて、言葉を吐息に乗せた。

今年初めてのキスです、と宣言したら、躊躇いもなく舌を伸ばす。
レンの下唇をそろりと舐めて、少し距離をとると、反応を楽しむみたいに表情を覗き込んだ。

「おめでとうアイチくん。姫始めがしたくて出てきたの?」

一度軽いキスを返すと、レンは身を起こして、顔にかかる髪を気怠げに掻きあげる。
密着した身体が離れるのを惜しむみたいに、アイチも起き上がった。

「レンさまがお酒を飲ませたりするから、ふあふあ気持ちよくなって……、」

「ふうん。発情しちゃった?」

寄り添ってくる細い肢体を、求められるままに抱き寄せる。
アイチはこく、と小さく頷いた。

「……けれどきみより、さっきのアイチくんの方がやらしかったかな。普段は大人しくて恥ずかしがりなのに、随分と積極的でね」

「ああいうのが、いいの、レンさま」

少年は、不満を隠しもしない。
口調にも翳りと尖りが伺えて、レンはむしろその不機嫌を喜ぶかのように笑った。

「そうだね、すきだよ」

「僕よりすきなの、」

「さぁね。きみがそう思うなら、そうなんじゃないかな」

「……厭、」

アイチは体重をかけてレンの胸へと力を加えると、そのままフローリングの床の上へと押し倒した。
腰に跨って、寛げた襟元に唇を寄せる。

「すき、レンさま」

かふ、と、柔らかな首筋に噛み付いた。
あかく歯型をつけて口を離すと、そのまま膚の柔らかいところを舌先で伝う。
きつく吸い付いて印を残す、その寸前に。

「だめだよ」

蒼い髪を引かれて、剥がされた。

「や。レンさまを、僕のものにするの、」

「僕がキスマークを沢山つけていたら、アイチくんが悲しい顔をする」

「やだっ!僕も、……僕だって、レンさまのこと、あの子よりもすき!」

切迫した口調で訴えるのを宥めるみたいに、レンはアイチの髪を撫でた。
優しく、やさしく。

壊れ物を扱う手つきとは、裏腹に。

「では、アイチくんにはできないような、酷い虐め方をしようかな。痛いのも、怖いのも、我慢できるね?」

下から見上げる視線が、刃のように研ぎ澄まされる。
背筋を震わせて、アイチは上気した頬を更に真っ赤に染めた。

「……はぃ、レンさま、」

頬に降りてきた手に、びくん、と身を竦める。

予想に反して、レンは酷く繊細な手つきで、アイチの頬から耳まで、髪に指を通しながら撫でた。

「自分で脱ぎなさい」

ひくく潜められた声に、支配者の色香を嗅ぎ取って、アイチは息を乱す。

ゆっくりとシャツのボタンを外しながら、時折許しを得るみたいに、レンの表情を伺った。
視線が着衣の奥へと向いているのを察すると、布地が膚を滑るだけで、ふるりと震える。

「……ぁっ!」

レンの手が下へと滑って、尖った乳首の上を軽く擦った。
そのまま脇腹を撫でて、アイチの中心へと行き着く。

ズボンの中で、はしたなく勃起したそれのかたちを辿った。
先端を見つけ出せば、爪を立てて掻く。
かりかりと往復して、固さを増すのを確かめたら、そこで手を止めて。

「欲しい?」

わざと焦らして、訊く。

「レンさまぁ……っ!」

アイチは腰を揺らして、はしたないほど率直に、刺激を欲しがった。

「……あげない」

レンが手を引くと。

「やぁっ!」

両のてのひらで捕らえて、指を絡めて、自身の猛りへと導く。

「ぁっ、ぁ、っ……!」

細い腰を懸命に振って、レンの手のひらに擦り付けた。

「駄目」

レンは力を入れて、少し乱暴にアイチの手を振り払う。

「っ願い、っ」

「きちんと、ね」

「レンさま、お願い……僕、イきた……っ」

「イクだけ?」

「レンさまも、僕、ので……イクの、」

「アイチくんは、僕をイかせたいの」

「……ん、レンさまがきもちいいの、僕はいちばん嬉しいです……」

潤んだ眸で見下ろすアイチが、つくりごとか真実か定かでない羞恥をちらつかせて、瞼を伏せた。

「では、お尻をこちらに向けて」

「はぃ、」

アイチは言われるまま、従順に頷く。

ベルトを外して、ファスナーを開けて、レンに見せつけるようにゆっくりと、ズボンを下ろしていった。あらわになった下着には、既に先走りが染みている。
わざと穿き口のゴムが引っかかるようにずらしてゆくと、押さえつけられたそれが解き放たれると同時にぶるると震えて、透明な蜜が飛び散った。

腰を浮かせて、体位を変える。

ふっくらと丸みを帯びた白い尻をレンに向けて顔を跨ぐと、上体を倒して、レンの欲望が目の前に来るよう位置を合わせた。

「嬉しい、です……レンさまの、おっきくなってる、の……」

ちりちりとファスナーを下ろして、反応を見せ始めた雄芯を取り出す。
手のひらで包み込んで体温を感じると、うっとりと蕩けた顔で見つめた後、おもむろに口に含んだ。

たっぷりと口中に溜めた唾液を絡めて、一気に喉の奥まで。
じゅぷ、と濡れた音を響かせながら、口腔をすぼめ、舌先をくねらせる。

「……ん、こういうのは、アイチくんより上手かな」
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