R_A

□R×A SS
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Merry Christmas,AL4!





FF本部、最上階。
街を見下ろすガラス張りの部屋は、無駄に広く無駄に豪奢で、なのにこの部屋の主たるレンは、いつも隅っこの方でごそごそと何かを企んでいる。

「レン様、……これは、」

革張りのソファの角を直角に合わせ、出来た隙間が、近頃のレンの気に入りだ。

そのスペースに嵌ったレンを中心にして、扇形に、ポップな色彩が洪水のように溢れていた。
砂糖菓子もかくや、といった風情である。

テツは突拍子もない彼の行動には慣れているが、モノトーンで統一された300uを超える室内の半分が、目も眩む原色とパステルカラーで埋め尽くされた様は圧巻で、思わず絶句する。

「メリークリスマスです、テツ」

ソファの陰から、ぱくぱくと口を開けたパンダのパペットが覗く。
それは白黒のボディに、真っ赤な帽子をかぶっていたが、続いて顔を見せたレンもまた、揃いのサンタ帽を紅い髪に乗せていた。

「あらまぁ、なんてお可愛いらしい」

いやいやいやいや!と、ツッコミたそうな顔をしたテツの隣で、アサカが朗らかに笑う。

「メリークリスマス、アサカ」

ぽえ、とレンも笑って。
右手のパンダが、もみゅもみゅと口を動かす。

きゃぁ素敵ですわレン様、と、黙っていればクールビューティな美貌が、相好を崩した。

「しかし困ったんだ、プレゼントが決まらないです」

レンはパンダと向かい合って、一人と一匹は、同時に同じ角度に、首を傾げる。
真っ赤なサンタ帽の尻尾の先で、真綿のようなポンポンが揺れた。

訊けば、今日はアイチが此処に遊びに来るのだという。
クリスマスプレゼントをあげたいんだ、と意気込んだはいいが、果たして何を贈れば喜んで貰えるのか。
さっぱりわからずに、手当たり次第に買い込んだという次第らしい。

「レン様が欲しいと思われるものを、差し上げては」

控えめなテツの意見に、

「僕はそうだな、島とかがいいかな」

レンは、視線を空中に泳がせて、少し考えた後で言った。

「レン様と彼では立場が違いますわ。中学生の男の子が、何を喜ぶかお考えになるとよろしいのでは」

「中学の頃か、……ブースターパックをカートン買いしたかったなぁ、でもこないだデッキあげたばかりだしね、」

アサカは床に散らばった諸々の小物に、素早く視線を走らせる。

ぬいぐるみストラップ
ラインストーンで飾られた手鏡
お菓子の形のUSB
ピンクの羽が生えたペン
マカロン詰め合わせ
リボン形のバレッタ
チャームが揺れるブレスレット
文字盤にダイヤの輝く腕時計
……、

「レン様は、先導アイチを根本的な所で勘違いされているのでは」

テツの指摘の通り、どう考えても女子が対象の品ばかりである。
可愛いすぎて、あれもこれもむしろ自分が欲しい、とアサカは思ってしまった。
レン様の贈り物選びのセンスは素晴らしいです、とウットリした後、お近くに居られて幸せです、という結論に落ち着く。

「アイチくんは可愛いから、可愛いものがすきかと思ったんだ」

「あの年頃ですと、少し背伸びをして大人っぽいものを持ちたいと思うのではないでしょうか」

アサカは深紅のネイルを施した爪の先で(「ファイト中って、手元がアップに映し出されますものね!」)、耳に巨大なリボンをつけて、血染めのノコギリを手にした兎のストラップを拾い上げた。レンのセンスは女子高寄りだ。

「DEATH兎は可愛いですけれど」

「……それは可愛いというのか?」

テツが訝しむ目の前で、可愛いよね可愛いです、と、レンとアサカが唱和する。

「可愛いより大人っぽいものがいい、か。うーん盲点だったよ」

ディナーに連れ出す時に、ジュエリーでも見に行こうかな、指輪は重いと思わちゃうかなぁ。

レンは右手のパンダと向き合って、同時に同じ角度に、首を傾げた。
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