Works
□R×K SS
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ひざまくら。
ギャグですが、櫂アイいちゃいちゃ。
ほのえろ注意!
目覚めて初めて、寝入っていたことに気付いた。すぐに体勢に違和感を覚える。公園のベンチなのに、枕をしているような。
……枕?
は、と目を開ける。
「おはよう櫂」
目が合った。真昼の太陽の下でも、落日のようなくれない。不吉なあかい眸。
「どういうつもりだレン」
櫂の声が不機嫌に尖る。
「どうって。ただの膝枕じゃないか」
ゆわり、と嗤って、レンは櫂の不満も不信も、意に介さないつもりらしい。
「男の太腿を枕になど不毛だ」
「……ふふ。そうかな?」
「帰る」
「待ちたまえ」
起き上がりかけた不自然な姿勢を、どういう技術か、みごとにぐらりと崩されて、櫂は再び理不尽な膝枕の上に沈む。
「いいかい、イメージするんだ櫂。……ここにいるのが僕じゃなくて、アイチくんだとしたらどうする」
「……何?!」
再び起き上がろうとした櫂の動きが、ぴたりと静止した。
イメージ。
ファイトの時と同じように、イメージする。
それなら得意だ。
アイチが膝枕。
(アイチが俺に膝枕)
「ショートパンツ姿だったら生ふとももだよね」
追い打ちをかけるように、レンの言葉が、櫂の脳内で映像を結ぶ。
頬の下にアイチの体温が。素肌が。男子とは思えない、白くて柔らかくて滑らかな……。
「そんなものは存在自体が犯罪だ!お前のイメージはふしだらすぎる」
イメージの撃破を試みる櫂の上に、重ねてレンの声が降ってくる。
「アイチくんの膝枕で、君は眠っている。アイチくんが君の髪を撫でる。アイチくんが君の頬に触れる。アイチくんが屈み込んで、きみの唇に……、」
(かいくん、すき……、)
幼い唇が、たどたどしく愛を告げる。
上気した頬、潤んだ瞳。少しだけ速くなった、胸の鼓動。
見上げれば目が合って、アイチは照れを隠すこともできずに視線を外して、
(あ、あんまりじっと見ないで……恥ずかしいよ……)
俯く。触れ合う肌がしっとりと汗ばんで、吸いつくようだ。
櫂は無防備なTシャツの裾から手を入れて、アイチの脇腹を撫でた。そのまま指を滑らせて、胸の突起をきゅぅっ、と摘む。
(……ひゃうぅ……っ!)
アイチが短く声を上げて、慌てて両手で口を押さえた。
子供じみたその仕草が愛らしくて、櫂は指の間に捕えたままの尖りが、つん、と立ち上がるまでくりくりと苛め抜く。少しの間指先を離してやると、アイチの身体から力が抜けるから、そうなるのを待って、不意打ちのようにいま一方の突起をくすぐった。
(ぁ、ぁ、やぁ……っ!だめだよ櫂くん、こんなとこで、そんなぁ……っ!)
小さな唇がしどけなく開いて、濡れた舌先が覗く。この可愛い口の中に指を入れてかきまぜたら、どんな風に啼くだろうか。
イメージが走りすぎて現実味を失ったせいで、櫂ははた、と我に返った。
「ッ!……やめろレン、それ以上はまずい」
制止したところで、素直に受け入れる男ではない。知っているはずなのにあえて止めてしまうあたりに、動揺が現れている、と自分を客観視したところで、櫂に冷静さは戻って来なかった。
「アイチくんが、きみにくちづける。アイチくんが君のシャツをはだけて、」
「やめろと言っている!!」
怒鳴ってみても。
レンの言葉に唆されて、イメージは走る。
……やめて欲しかったら、お前からキスしてみろ。
と、言ったら。
(へっ??……そんな、えっと、……、)
ただでさえ上気していた頬が、更に真っ赤になって、アイチはしどろもどろになる。櫂の表情を窺って、目を合わせて、それでも許してもらえないとわかったらしく、視線を一度そむけて。ふぅっ、と深呼吸して。顔じゅうに力の入った、変な表情で。
(めっ、目を閉じててね、ぜったいに開けちゃだめだからね!!)
アイチは、ぎゅむっと瞼を閉じる。櫂が変わらず目を開けたままだということには、全く気がつかないようだった。そのまま屈みこんで、ぎりぎりのところで、うっすらと目を開ける。
……と。無論、櫂の視線と、真正面から近距離でぶつかることになるわけで。
(櫂くんひどい!目を開けちゃだめだよっ!)
屈んでいたアイチは一瞬にして起き上がって、ぷん!と横を向く。胸を弄る代わりに頬に手を添えたら、ぴくん、と身体を震わせて、それでも再び目を閉じた。
(一回だけだからね)
言って。
すぐの。
……一瞬。
みじかいみじかい、くちづけだった。
離れてゆくアイチの頭を撫でるようなかたちで、半ば強引に引き寄せると、櫂は柔らかな唇を齧るようにくちづける。舌先を歯列のあいだに強引に差し入れて、アイチのそれを絡め捕った。
(んんっ……は、……ァっ、)
ちゅく、と濡れた音をわざとみだらにたてて、聴覚からも犯すつもりで。
舌の裏も、口蓋の上も、綺麗に整った歯の並びにも、余さず舌を這わせる。
(かい、くんっ、……ん、んんぅっ!だめぇ……っ)
名を呼ぶ声も、合わせた唇の間に消える。アイチの声は次第に高く、不安定に掠れてきて、不慣れな欲情を匂わせていた。閉ざすことを忘れた唇は仄紅く色づいて、混ざり合う唾液で濡れてひかる。とろりと潤んだ目が、更なる行為をねだっているようで、櫂はそのまま体勢を入れ替えると、ベンチの上にアイチの未成熟なからだを横たえた。
「駄目だ!!!」
イメージが臨界点を超えたようだ。櫂はがばりと起き上がって、
「こ、公園でなんということをさせる気だ……」
荒く息を吐いた。鋭いはずの目元に朱がさして、珍しくも動揺を表情に刻んでいる。
「なんということをしようとしていたんだい?」
的確すぎる指摘に、櫂は返す言葉に詰まった。無言でふい、と背を向けて歩き始める。表情も動作も、既に常からの隙のない櫂だった。
「可愛いよ櫂。そんなに好きなのに奪うこともできない、君の誠実さは臆病だ。その弱さを、僕はとても愛している」
その背にレンは、ひどく愉しげに声をかける。
「煩い」
ひくく応じてしまうのは、どこかに隙が残っているからだろうか。
「もたもたしていると、僕が奪ってしまうよ」
真昼の公園にそぐわぬ暗黒を響かせて、レンは其処にだけ夜が落ちたような嗤い方を、した。
終。
櫂くんを書こう!という練習。練習になってねぇ←
ほんとはもっと喋らないよね。
レンがアイチを櫂から奪ってくんだけど、結局レンも櫂のことが好きで、櫂よりレンを選んだアイチも、本当は櫂が好き、という不毛な三角関係を書きたくてこのサイトを作りました。あれっでもこんな小説……??
レンのわらいかたは、ふわり、でも、ゆらり、でもなく、ゆわり。
おまけ。
櫂「そもそもお前は何をしに来たんだ」
レン「ふふ、嫌がらせにきまっているじゃないか」
櫂アイは府中に住んでるらしいので、レンは都心部在住希望。とても手間がかかるのに、わざわざ逢いに行くんだー。
2706字
2011.12.08