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□DC/男子・中二
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DS 男子/小六(Delight Song)





雪の似合う街だった。
その日も、雪が降っていた。
さらさらとアスファルトの上に転がる粉雪を、櫂はこの街で初めて知った。

並んで校門を出たはずのレンは、放課後になってちらつき始めた雪に、分かり易くテンションを上げて駆け出した。
滑って転んで雪塗れ、という予想が簡単についてしまって、櫂は少しはらはらしながら、その背を追う。

……追っていたつもりだったが、あっという間に見失った。

レンの行動は、いつも無軌道だ。
幼馴染のテツでさえ読めない時があるくらいだ、出会って半年少しの櫂には、まだまだ把握しきれない。
雪は夜に向けて激しくなる予報だと、学校を出る時に担任から注意を受けた。積もる雪に嵌って身動きが出来なくなるレンを、容易くイメージ出来て、櫂は溜息をついた。

携帯を鳴らしてみても、勿論、取る気配はない。レンに電話が繋がるのは、十二回に一度くらいだ。
天を仰ぐと、灰のように降り注ぐ粉雪が、櫂の前髪に落ちて引っかかった。

「櫂、」

ぴょん、と弾むような声で名を呼ばれて、振り返るより先にレンが降って来た。もとより、活動的な性格でもない。電飾を纏った欅から、重力に任せた勢いで、飛び降りるというよりは、転げ落ちる。
受け止めようという意識すらする前にぶつかったから、二人は粉雪を散らしてアスファルトの上に崩れた。

櫂が体勢を立て直すと、既にレンはちょこんと地面に正座して、デッキを手にしている。

「いいところで会いました、ファイトしましょう、櫂」

「いいところじゃない。俺はお前を探して、」

苦い顔で、苦い声音で言いかかる。
……と、レンは最後まで聞かず、

「僕を探してくれたんですか」

きらきらーん。
眸を輝やかせた。表情が、一気に華やぐ。

「普通探すだろう」

「櫂には普通ですか。でも僕は特別な気がします。嬉しいです」

……いや、そんなまっすぐにいい顔されると。

「お前はよくわからん」

櫂はそっぽを向いた。
頬がほのかに赤らんでいるのは、この雪と寒さのせいだろうか。

レンは鼻歌をうたっている。

メリークリスマス、
メリークリスマス、
しあわせになれますよう、
しあわせに。

紅い髪のうえに。
紅いシャツに包まれた肩に。
粉雪が、はらりはらりと降る。

……シャツ?

「……いや、レン、上着はどうしたんだ」

色々あって、ツッコむのが遅れた。
櫂はあらためて問う。
目の前のレンは、この真冬に、ありえないくらいの軽装になっていた。

「コートは置いてきました。雪が積もると素敵なんです」

視線の先を追うと、欅の枝の上に、確かに引っ掛かっている。

「素敵じゃない。……取って来い」

「もうちょっと積もると、楽しいです」

「取って来い!」

「もうちょっと待ちます」

物腰は柔らかいが、レンは基本的に、言い出したら聞かない。
櫂は軽くひとつ、今日何度目かになる溜息を吐いた。

それから細い腕を掴むと、冷えた身体を引き寄せる。

「入ってろ」

成長期だからという理由で買って貰った、大きめのダッフルコートを着ていたから。
櫂の体温で暖まったコートの内側に、華奢なレンはすっぽりと収まった。

「あったかいです。櫂。」

大きな目を丸くして。
レンはほわぁ、と白い息を吐く。
少し驚いたようだ。

驚かせてやった、いつも驚かされているばかりだからな、……櫂は少しだけ意地悪な気持ちになって満足して、レンの首にくるくるとマフラーを巻き付けた。長めのマフラーだから、自分と一緒に巻いても十分に足りる。

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