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決戦直前01

33話のテツとアサカとレン、ぼへーとした日常。






……勝てる。

自陣、敵陣、展開されたカードに目を走らせて、アサカの唇に笑みが刻まれた。

強敵だ。
けれど勝負はもう見えた。

決着の瞬間までを瞬間的にイメージすると、昂揚する。感情を声に乗せて、高らかに宣言する攻撃は、無駄なく容赦なく間断なく続く。

「ターンエンド」

場に集中していた意識が一瞬途絶え、周囲が見える。満員の会場からは熱烈な声が上がり、アサカは衆人看視の中で戦う自分を誇らしく思う。

……と。

自チームの席が目に入った。
脱落したキョウは居ないし、レンの姿もまた見えない。

(レン様、……見ていて下さらないの、)

瞬間、しょんぼりと闘気も萎えかけた。
ただ大柄な男が、こちらに向けて何か……。

(テツ……?)

アサカは首をかしげた。

テツの仕草は単純で、胸筋を鍛える時のように、胸の前で揃えた拳を、にょーーーーと左右に開く。

(引き延ばせ、ね。了解)

アサカは軽く頷くと、視線を再びカードの列に滑らせた。集中する。表情が消える。昂揚よりも彼女の艶を増す、勝負への気迫。

……何かあった。

それが、次にたたかうテツ自身の事情とは思えなかった。AL4に、試合直前にトラブルを起こすような気構えの人間はいない。
当主たる、レン自身を除いては。

(レン様、)

何があった?
けれどそれは、今はどうでもいいことだ。




「強くてレアなカードを使って颯爽と勝つと、販促的に美味しいって、頼まれてたんだよね」

すっかり忘れていてね、困ったなと、さして困った風でもなくレンは呟いた。

「どうしようか」

デッキケースを逆さにすると、ずらりと床の上にカードを広げる。

「レン様、しかし」

「これこれ。黒くてちょっと格好いいし、使ってあげてもいいかな」

決勝戦である。
当日である。
数時間後には、日本一が決まる。

そのタイミングで、デッキの組み換えなど。

しかも理由がろくでもない、とテツには思えた。

だが、ろくでもなくても、レンの望むことならば最優先に。AL4は、そういうチームだった。

「レアカードとか、特になくても勝てるよね。その方が面白いと僕は思うけど」

まぁ大人の事情も、わかってあげないとね。

言いながら、レンはカードを収めたファイルをひっくり返し始める。磨き抜かれた床に、色彩の乱舞。

花弁のように。

レンの周囲だけが、みるみるうちに散らかってゆく。

テツはうつくしく直立した姿勢を保ったまま、床に這う当主の背を見下ろした。

「レン様、上着をお預かりします」

「いいよ別に」

「以前同じように床でデッキを組み始めて、裾を踏んづけてこけたことがおありです」

「……お前はどうでもいいことをよく覚えているね……」

黒いコートをもそもそと脱ぎながら振り向いたレンの表情は、ちょっとぷんすかしている。FFをAL4の地位にまで上り詰めなければ、決して窺えない当主の素顔だった。

(アサカ、すまん)

一人でいいもの見ちゃったよ、萌えるレン様だよ、お前にも見せてやりたかったよ、と。

テツは生真面目な顔を崩さぬまま、心の奥で手を合わせた。

「俺とアサカで時間を稼ぎます。……存分になさって下さい」

床のデッキに向かうレンは、ひらりと手を振って応じた。



終。



決勝戦って、レンくんがたたかったということは、テッちゃんアーちゃんのどちらかが負けたということ?
でもFFて、負けたらキョウくんみたいな状況になるんだよね……??
三人総当たりなのかな。そのへんがまだよくわかってないです。

テツとアサカは実は付き合ってて、レン様萌え萌え同盟な仲だとよいかと。
レンアサもちょっと考えたけど、女の子が不幸になる以外ないカップリングってどうなのかなぁーと思って、あんまりつきつめてない。
レンくんは、浅く付き合うならいいけど、深く思い入れると泥沼というか。櫂くんがかつてその沼にはまっていたらもえる。アイチきゅんは今まさにはまり中だと更にもえる。

1559字
2011.12.02
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