R_A

□にょたあい。
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しばらくは、二点を捩じるように捩じ込んで。
それから。
手のひらが落ちてきて、襞全体を押し、擦る。

「あ、……っ、そこ、や……っ、やだ、触っちゃ、やです……っ!捏ねないで、だめぇぇぇっ!」

布地越しの、緩い愛撫。
そのはず、だったのに。

僕は自分が何を言っているかも意識できないまま、なんか……おかしくなって、しまう。

女の子、って……こんな……の?
自分でするのと、全然違った。

加減が調節できるから、とか。
それだけが理由だとは思えない。

僕の体格が、ちっちゃく、曲線的なフォルムになってしまっているせいで。
傍らのレンさんが、いつもよりすごく男の人、って感じがして。
きっちりと着込んだ制服越しの、しっかりとした身体の感触とか。
手首から指先にかけての鋭角的なラインとか。

意識しちゃうと……どきどき、する。
だからなのかな。

はぁ、はぁ、ってすっかり荒く乱れた息をしながら。

……イっちゃった?って。
見当はついたけれど。

「イっちゃったね」

面と向かって指摘されると。

ただ。
羞恥だけに、塗れてしまう。

レンさんは、力の入らない僕のことを、支えながら起こしてくれて。
僕は、促されるままに寄りかかると、甘えるみたいに崩れた。

やっぱり、今日はいつもと感触が違う気がする。
身長差も、10pくらいは余計にあるのかな。
自分が、すごく頼りない。

「脱がせてから、って思ってたんだけど……そんなに、欲しかった?」

髪を撫でるのが、好きなレンさん。
髪を撫でてもらうのが好きな、僕。

耳朶を擽って、頬を辿って。
猫をじゃらすみたいに、顎の下を掻く。
その、気まぐれな指先が、僕はとても好きで。

追い立てられて、追い詰められた後の、ひとときの安らぎに似た触れ合いの時間も、大好きだった。

言葉遊びも、いつもと変わらない。
男の子の時と同じようにしてくれるのが、安心できる。

意地悪を、またレンさんが言って。
僕は、気怠げなまま、唇を尖らせた。

「や……ひど、……です、レンさん……!」

「気持ちよかったかい?……けれど、これで終わりじゃないよ」

ぞく、ってする。
こんな半端な遊びで、レンさんが満足してくれるわけがなくて。
でも。
そうしたら。

……続き。
ひとつだけで。

きゅん!
って疼く蜜口に。
レンさんの……。

……あ……。

駄目、だ。
そんなこと考えたら、また、おかしくなってしまう。

……欲しくなる。

鼓動がどんどん加速した。
今の僕は、女の子なのに……女の子の身体で、レンさんを、男の人を欲しがるだなんて。

すごくすごくいけない気がする。
はしたなくって、みだらで、えっちで。

レンさんだって困ってしまうくらいの、欲深い、悪い子。
……そんな気がした。

「けど……学校、これから……どうしたら……っ」

その衝動を追及するのは、すごく怖くて、僕は意識して話題を変える。
普通にお話していれば、どんなにイってもきりがない、この疼きも、忘れることが出来るかもしれない。

「今日のアイチくんは可愛すぎて、学校は休んだ方がいいんじゃないかな」

レンさんは、真剣な面持ちで、理屈に合わないことを言い出す。

「だめ、です……ちゃんと、しないと……」

一緒にレンさんのお家なんて行ったら。
ふたりきりで、ずっと過ごしたら。

欲しい、っておねだりしないでいられる自信が、僕には全然なかった。

学校へ行って、授業を受けて。
そうしているうちに。
身体が変なの、治ってしまったらいいのに。

……淡い期待だろうか。

どうしたらいいのか、きちんと考えられなくて。
僕は小さな声で、弱弱しく主張した。

もしかして、レンさんのお家に連れて行かれちゃうのかな。
ぅうん……でも、やっぱり学校には、きちんと行かないと。

レンさんは強引なところもあるし、僕を困らせるような我儘も、時に口にする。
けれど。
自分がきっと普通の高校生じゃなくって、FFの活動を優先した暮らしをしている分、僕が学校や家の用事をきっちりしたい、っていうのは、大事にしてくれて。

デートしようよ、学校なんて休んじゃって、って誘われ方をするのは、いつものことだった。
だけど結局、ちゃんと放課後まで待っていてくれるんだ。

「こんな無防備なまま学校に行ったら、すぐにみんな身体の異変に気付くだろうね……教室で脱がされて、そうしたらもう濡れちゃってるから、指くらい簡単に食べてしまう。

机の上で開脚させられて、大勢が見ている前で、花びらの真ん中に指を二本も三本も突っ込まれて、ね。

それでイっちゃったら、今度は犯されちゃうかな」

言葉を返すレンさんのイメージは、なんだかすごく現実的で。
苛められていた経験からすると、ほんの少し酷くなったら、そういうこともあり得たんじゃないかと思ってしまう。

「やっ!やだ……っ、怖いこと、言わないで下さ……っ」

「ああ、泣いたら駄目だよ……僕が守ってあげるから、僕だけのもので居なさいね」

誰かにされるのなんて厭です。
誰かに触れられるのなんて厭です。

「……レン、さんっ」

少しだけ、困ったみたいな口調が、嬉しかった。

ごめんなさい、泣いてばかりで。

謝る、代わりに。
僕は名を呼んで。

ひととき、優しい恋人の胸に、寄り添った。
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