R_A
□R×A SS
2ページ/8ページ
そこへ、ノックの音が響く。
ああうんどうぞ、とぞんざいな主の返事を受けて、遥か後方で扉が開く。
「失礼いたします。お連れいたしました、レン様」
入って来たのは、オレンジの髪の青年と、一歩下がって制服姿の少年だった。
「……アイチくん、」
レンがぱちくり、と瞬いて。
サンタ仕様のパンダを、取り落とした。
「ごめんなさい、僕、早く着いちゃって……待ちますって言ったんですけど、」
お取り込み中ですよね、と。
控えめな声が、躊躇う口調で告げた。
テツとアサカが、やっちゃったよ、という顔で、目くばせを交わす。
「……きみは、空気っていうものが読めないのかなぁ?」
レンの背後から、どろどろと黒いものが立ち上るのが、見える気がした。
紅の眸が、ゆわゆわと幻のように光る。
それは。
殲滅すべき敵を見据える目だ。
KYって、それは貴方に言われたくないでしょう、レン様。
テツは声にしないが、視線がそう語っていた。
ただし、言葉をかけられた美童キリヤ(テツとアサカは、名前を覚えていた)は、白い頬からいっそう血の気を失って、傍から見て気の毒なほどだ。
「……ごめんなさい、僕が早く来ちゃったから」
般若の形相を目の当たりにして、アイチが目を伏せた。
レンは一転、視線を移して。
「ということでアイチくん、可愛いものを沢山集めたんだ。メリークリスマス!」
開き直ったのか、随分と陽気だ。
表情までもが、がらりと変わった。
テツとアサカで、え、あの、すすすすすすみません、と挙動不審に陥りつつ、呆然と固まるキリヤを引っ張って、下がる。
二人きりになると、空調のきいた部屋でも、どこか寒々しい。
しん、と静寂が落ちたら、冬を実感する。
けれどここは無駄に広く、無駄に豪華で、今やカラフルな色彩に満ちていた。
「メリークリスマスです、レンさん」
パペットをパンダからイグアナに取り換えたレンの後ろは、壁一面の窓で。
正面に、高層ビルの群れが見える。
とりどりの色で。
とりどりの光で。
壁面に描き出される、ツリー。
電飾のスノーフレーク。
輝くリース。
人工の灯を背に、足元にはプレゼントの洪水を従えて。
レンは、微笑んだ。
とてもうつくしい人なのだけれど、どうしてか今日は可愛く見える。
アイチはうっかり表情を崩し、いやいや年上の男の人に、可愛いなんて失礼だよねと、姿勢を正した。
「レンさんに似合うと思って、」
背中に隠した薔薇の花束は、レンの髪と眸の色に似た、深い深い宝石のような紅で。
受け取ったレンが笑うのを、アイチは、華が開くみたいだと思った。
メリークリスマス。
メリークリスマス。
特別な夜だから。
二人は、もう一度、視線を交わして、言葉を交わして。
今度はとても近い位置で、囁くみたいに、笑い合う。
いとしききみに。
幸、あれ。
終
2011.12.24
2607字
メリークリスマス!
イヴはみんな朝からデートで幸せだったよね?!ディスプレイ越しの逢瀬って未来恋愛的orz
アンケートでレンアイにコメント下さった方、ありがとうございました。
クリスマスにやるしかねぇ!はずせねぇ!と思って、このように。
レンは乙女発想だけれど、アイチも大概少女趣味で、野郎二人と思えぬ百合世界を目指してみました。
AL4なのに、キョのつくひとが入らなかったごめん!