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□ももいろひめ
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そういえば、自宅の庭でも咲き始めていたっけ。
アイチは硝子の外に、満開の花を見つけて、ふと視線を止めた。
白に近い控えめな薄紅の華が、けぶるように咲き誇っている。

「よそ見かい、余裕があるね」

アイチの内側を、いっぱいに満たしたものを。
レンは、言いながら、より深くへと挿し入れた。

ず!
柔らかく解されたはずの粘膜が、それでも引き攣れて。
きつくきつく、喰い締めてしまう。

「ひゃん!」

中庭に向いた壁は全て硝子で出来ていて、天井から床まで透き通っている。
まだ浅い春の陽射しは、あかるくて。
誰にも見られることがないとわかっていても、其処に手を突いた姿勢で背後から抱かれるのは、アイチにはとても抵抗があった。

「……ふぁぁっ、レン、さ、……ちが、……!」

そのせいか、……普段よりも、余計に過敏になっている。
声を上げると、閉じることを忘れた唇の端から、涎が零れた。
艶のある薄浅葱の布地を幾重にもかさねたフリルを掠めて、石張りの床へと滴る。

今日は女の子のお祭りだからね、などと浮ついたレンは、いつの間にやら採寸を済ませていたらしく、淫微なドレスをオーダーしていて。
呼び出したアイチが自宅に到着するやいなや、有無を言わさず着替えさせた。

……いや。
「着替えなさい」
と。
短く指示するだけで。
真っ赤に頬を染めながらも、アイチは拒めない。

白と薄浅葱の二色で構成された華美で贅沢な衣服は、濃紺の髪にも蒼の眸にも美しく映える。
襟が高く、袖も長く、手の甲の半ばまでを隠した。
なのに背中が大きく開いていて、後ろ姿はあられもない。

ぴったりと身体の線を浮き立たせる上半身のつくりから、腰で大きく膨らませた下半身の対比が、綺麗な曲線を描く。
薄手の布を重ねてボリュームを出したスカートは、背後から見れば、足首にかかるくらいの丈で。
けれどそこから斜めに続く裾は、真っ白なレースに飾られながら次第に上がって、身体の正面では、脚の付け根までしかない。
真っ直ぐに立つと、ぎりぎりで下着が見える。

無論のこと、揃いのレースで飾られたTバックも、レンはプレゼントしてくれた。
……アイチは、着替える中途。
服の構造がわかった時点で、頬を染めてしまう。

同じ色味の華奢なリボンを、顔の両サイドに括りつけられれば。
さらさらの髪に大きな瞳、磁器人形のような滑らかな頬で。
女の子にしか見えないアイチの、完成だった。

……けれど。

太腿までの、白いニーハイソックスと。
斜めに続くドレスの裾の、真ん中には。

女の子の下着を、布地の下から押し上げる膨らみが。
隠すことも出来ずに、震えていた。
そんな格好をさせられては、触れられるまでもなく、染みをつけてしまって。
アイチは両手でどうにか、レンの不躾な視線を遮ろうとしたが、許されるはずもない。

可愛いよ、おいで、と一言。
ひどく高級そうに見える衣服を、脱がすこともせずに交わりたがるのは、レンのいつもの悪い癖で。

「こんなのっ、……服、汚しちゃいます……っ!」

羞じらいに任せて、抱き寄せる腕を拒んでも。
口づけの一度でとろとろと蕩ける身体は、すぐに意志を失くす。

横抱きにされて、リビングから連れ出される僅かな間に。
抵抗を示す両腕から、力が、抜ける。

キスを重ねて。
舌を絡めて。
吐息を、混ぜ合う。

そうしている間に、レンはアイチを、好みの場所へと連れ去ってしまう。

気の向くまま。

朱色の壁の茶室だったり。
丸い天井のプラネタリウムだったり。
霧の出るサウナだったり。
アイチは色々な所で、身体を開かれた。

独り暮らしの癖に、一人では決して使い切れない空間の、ずっと奥。
寝室と浴場の間に、小さな中庭がある。

今日は、ここで?
訊くまでもなく、床へと下ろされて。
背中から、抱き締められる。

密着して居たのは、先程までと変わらないのに。
とくん、と、鼓動が速まった。

此処で、レンに、抱かれる。
くらがりの寝室以外の所では、アイチはいつも、緊張して強張ってしまう。
恥ずかしくて、恥ずかしくて、体温が上がってしまいそうだ。

慣れることなんて、全然、なかった。
……だから。

せめて、目を逸らすのだけれど。
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