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□大ヴァンガ祭でレンくんが働くようです。
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(打ち合わせ篇)
(アイ櫂アイ、レンアイ、アイチはナチュラルにビッチ)


開会宣言って、僕がやるんですか、と。
アイチが戸惑いを露わにしても、主催者であるレンは、しれっと肯定するだけだった。

「きみは全国大会優勝チームのリーダーなんです、多少の重責は慣れておいた方がいいよ」

「でも……っ、……皆の前で話したりとか、大勢の前に立つとか、僕はレンさんみたいに上手に出来ないし、好きでもないですし、その……、」

「僕は場数を踏んでいるだけだよ、アイチくんならすぐに出来るようになるからね」

「レンさんは、……けど、目立つのとか好きだし、人の視線を集めても平気だし、容姿もいい、し……」

言い淀むアイチの声のうちに、僕とは違って、と小さな呟きが混ざる。
レンは俯いたアイチの視線の先に屈み込むと、沈んだ表情を覗くみたいに、目を合わせた。

さらりと蒼い髪に指を通して。
幼い子供を、あやすみたいに。

「聞き分けのない子は、嫌いになってしまうよ?」

「……やっ!」

言葉の内容とは裏腹に、口調はひどく優しい。

や、です、と。
小さく首を振って、それでもアイチはレンのシャツの裾を遠慮がちに引く。
その指を絡め取って、掬い上げた手の甲に軽く口づけながら、レンは続けた。

「アイチくんなら絶対に大丈夫だから。……櫂も来るし、見ていてくれるから頑張れるね」

「え。……櫂くんが……!」

アイチの声が弾む。

顔を上げて。
正面のレンを、真っ直ぐに見上げて。
大きな蒼い眸が、陽の差す海のように輝きを増す。

「さっきまで曇っていた顔が急に明るくなったね、……妬いていいかい?」

「ふ、……ぇっ!きゃぅ、っ」

言うなり、アイチの細い顎に手をかけたレンは、慣れた仕草で上向かせて。
抵抗される間もなく、隙もなく。

唇が、重なった。

……と、思えば、下唇をついばむように歯を立てられて、アイチは思わず高い声を上げる。

甘噛みを繰り返すレンは、アイチの唇の弾力を味わうように。
強く、柔く。
深く、浅く。
きつく、そっと。

幾度も、続けた。

やがて自然にほころびた唇の間から、ピンクの舌先が覗けば。
それも、容易く絡め取られて。
深く吸われる。

にちゅり、と濡れた音を立てた。

「……ぁ、ぁ、……ぁっ!」

口腔を探られ、粘膜を舐め上げられて、切れ切れの吐息の合間に、隠しきれない昂揚が滲む。

「櫂がすき?」

唇を離しただけの距離で、レンがアイチに問いかけた。
抑揚のついた声は、ふざけているようにも真剣にも、どちらともとれる響きで。

「……はぃ、」

けれどアイチは、困惑することもなく頷く。
くちづけの余韻に、伏せた瞼を縁取る長い睫毛が、ふる、と震えた。

「はっきりと言うね、」

「レンさんが……そう言って欲しいんだと思って」

ぐい、と手の甲で、アイチは顎の先へと零してしまった唾液を拭う。
その仕草で、顎にかかるレンの手が外れた。

「僕の望む通りのきみで居る、ということかい。ずるいな」

「……レンさんに好きでいて貰う為に、です」

顔を伏せれば、前髪が落ちかかって、アイチの表情を、蒼のくらがりへと隠す。

「開会宣言ひとつを、重責と捉える子の言い草じゃぁない」

「……それは……っ!けれど、そういうのは、僕は本当に苦手で……っ」

けれど煽るようなレンの言い草に、すぐに顔を上げて抗弁した。
頬が真っ赤に染まっていて。
眸が、常よりも潤んで。

言葉で、レンを翻弄するような態度を取っていたのとは、裏腹に。
ひどく純粋な羞恥に、身を焦がしているようにさえ見えた。

「可愛いよ、……けれど櫂が見ていてくれたら頑張れるけど、僕ではきみの力にはなれないんでしょう?」

「レンさんは……レンさんは、櫂くんみたいに、遠くから見ていてくれるのが嬉しいんじゃなくって、……その、……」

「……身体の関係?」

「そ!そそそそそそんな、……そんな言い方って!!……ない、です……、」

上気した頬を、さらに紅潮させて。
アイチは、また、俯いて。
言葉の端が、足元へと落下するみたいに、消える。

「なくは、ないよ。……ほら、」

対するレンは静かに言うと、蒼い髪がまだらに落ちかかって隠す頬へと、手を伸ばした。
……触れれば。

びくん、と、大袈裟なほどに小さな肢体が震えて、アイチは小動物に似た仕草で、首を竦める。

「ね?きみはこの指先を欲しがっている」

傷一つない滑らかなカーヴを、整えられた爪の先が掠めた。
それは膚の上ぎりぎりを、触れるか触れないかの距離で滑って。

赤みを増した下唇を、押し下げる。
そのまま歯列を割って、無防備な口の中へ進んだ。

「……ん、……」

「貪欲なほどに、……ねぇ?」
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