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□大ヴァンガ祭でレンくんが働くようです。本番篇。
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それだけで、一度、離れて。
アイチは、首を傾げた。

さらりと長めの前髪が、上気した頬を掠める。
大きな蒼い眸が潤んで、レンの紅眸を覗った。

……いい?
なんて。

臆病に。
控え目に。
問いかけるみたいに。

赤みを増した小さな唇が、微かに開いて。
意識的にか、無意識のうちにか、誘いかけるようだ。

揺れる視線を、レンが確りと受け止めれば。
アイチは、瞼を伏せて。
先程までよりも少しだけ、唇を開いた。
長い睫毛のつくる翳りが、そっと頬へと降りる。

ついばむように。
レンの薄い唇を、吸う。
短いリップ音をたてて繰り返しながら、震える舌の先を伸ばして口腔のうちを、探った。

湿った粘膜に触れると、一度、びくりと動きを止めるけれど。
やがてそろりと舌の表面を撫でて、もっと奥へと入り込んだ。

反応を示さないレンに、乞うように、舌先を動かす。
ちろちろと、先端を使って、くすぐるみたいに。
側面に沿って、互いを絡めた。
唾液を混ぜて。
歯列を辿る。

常から、レンにそうされているように。

「……レンさ、……きもちよく、ない……ですか……?」

問いかける自身は、とうに息を乱して。
濡れた口元を拭いもしないまま、アイチは問いかけた。

伏せた瞼の下で、欲情に濡れた眸が不安げに揺れる。

「続けて」

明確な答えをはぐらかしたまま、レンはただ静かに促した。
性的な昂奮を隠しきれぬアイチの表情を、愉しげに見上げたまま。

つい、と、三日月のかたちに。
薄い唇が、吊り上がる。

「……はい、」

視線から逃れるように、斜めを向いて。
アイチはレンの身体に触れたまま、椅子の下へと膝を突いた。

肩に置いていた手を。
胸へ。
脇腹へ。
……更に、下へ。

着衣の上から、煽るようにずらす。

「……っ、」

躊躇いがちに、一度、手を止めた。
けれど細い指先は、黒い布地に包まれたレンの、直載な箇所へと伸びる。

おずおずと震えながら。
それでも。
その眸に、期待の揺らぎを確かに宿して。

……触れた。

そっと。
かたちを、辿る。

未だ欲情を示さぬ其処に、幼い相貌が不釣り合いな翳りを帯びた。
眉根を寄せて、今にも泣き出しそうな表情になって。
低い位置から、恋人の相貌を見上げる。

「……いいよ、」

「けど……っ」

レンさんは欲しくないの。
レンさんは、……したくないの?

ためらいが、声を震わせた。

「きみの欲しいようにして御覧」

さらりと長い前髪に指を通して。
そのまま、頬に触れる。
レンは殊更に優しい口調で、促した。

欲望の在り処を示すその言葉に、一際頬を赤くして。
アイチは、それでも確かに首肯する。
ひとすじ跳ねた蒼い髪が、動作につれてぴょこりと揺れる様を、レンが微笑んだまま見つめた。

手のひらを小ぶりな頭に乗せて、手触りのよい柔らかな髪を撫でたら、緊張を隠せず居た表情も、束の間、緩む。

視線を、落して。
ファスナーに手をかけると、ゆっくりと下ろしてゆく。
不器用な手つきで寛げた奥から、捧げ持つように取り出したレン自身へ、そっと唇を寄せた。

ちゅ、と、先端に口付けて。
舌先を這わせる。

ちろちろと、まずは小さく、窪みを突ついた。
それから膨らみの全体を唇で包むようにして、口腔の内で舌を絡める。

吸って。
喉の、奥まで。
口を窄めると、唾液を塗りたくるみたいに、しきりに舌を遣った。

顔全体を上下させて、唇で締め上げる。
其処は未だに、欲望を兆していない。

じゅぶ、じゅぷっ。

交接そのものであるかのような、淫猥な水音が、喧騒を背後に二人を包み込んだ。

アイチの小さな口では、根元まではとても含みきれなくて。
喉の奥へとぶつかる所まで、ぎりぎり呑み込んで。
はみ出した部分へは、指を絡める。

垂れて来る唾液を塗り込むように、包み込んでは頻りに上下させた。

「……きもちよく、ない、ですか……?」

どんなに刺激しても、固さも大きさも変わらぬままで。
アイチは不満げに、それを見つめる。
そうして不安げな顔を上げて、問いかけた。

「僕に気持ちよくなって欲しいの?」

「……はぃ、……」

「アイチくんが、気持ちよくなりたいんでしょう?」

くすくす、と笑いながら。
レンは、問いで返す。

アイチはそれを受けて、真剣な顔で首を振った。

「……レンさんに、」

言うと。
今度は、両手でレン自身を包み込んだまま、袋の方へと舌を伸ばす。
双玉を片方ずつ口に含んで、転がすように舐め回した。
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