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□#2 僕はただ約束が欲しかった
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#2 僕はただ約束が欲しかった
僕は暗闇の中で、そのひとの背に手を回した。
子供のような僕とは比べ物にならない、確りとした筋肉のしなやかさが、てのひらに伝わる。
ぎゅぅ、と縋りついたら。
体温で包み込むようにして、抱き返してくれる。
密着した下半身が擦れ合って、にちゅにちゅと水音を立てた。
下腹にくっつく程に反り返った僕自身は、そのひとの硬い肉茎に圧迫される。
裏筋をずい、と滑るように押されたら、堪らなくって。
僕は声を上げた。
たくさんたくさん、啼くみたいに。
あつい。
あつい。
くるって、しまいそう。
「すき、すきっ……すき、です、あっ、あっ……!」
びくびくと、震える。
息が上がって、両腕に力が籠る。
お尻を上げて腰を回すと、ぶつかり合う昂りは角度を変えて箇所を変えて、唐突に予想もしない快楽が、背筋を抜けた。
せわしない僕の動作に、そのひとは身体を一度離して。
太腿の裏に手を回すと、僕の両脚をMのかたちに広げた。
「……やぁ、っ!……恥ずかしい、です、」
手を伸ばして、直載な箇所を隠す。
僕自身の、滾る茎の先端からこぼれた蜜が、手のひらを汚した。
……あ、
僕、
こんなに、びちゃびちゃに……濡れて……。
恥ずかしい。
堪らなく、恥ずかしい。
真正面から痴態を見られてしまって、僕はどうしたらいいのかわからなかった。
ふるふる、と首を振る。
けれど、両手は容易く退けられてしまって。
僕の欲望は、まっすぐな視線に曝される。
ぐ、って折り曲げた膝が胸につくくらい押されたら、お尻の方まで丸見えになった。
ひくひく、って、男の人を欲しがるの……みんな、見えちゃう……。
「やめて、っ、くださ……っ」
僕は、せめて顔を隠して。
真っ赤になった頬を見られないように。
視線がかち合わないように。
けれどその位置からも、やんわりと手は外されて。
頭のうえで、両方の手首を、ひとつにまとめて押さえられてしまった。
そうして、お尻の入り口に。
あつい、塊があたる。
ぐち、と。
粘膜が、触れあう。
「……っア!」
巨大な質量が押し入って来る予兆に、僕は震えた。
入口が押し広げられる。
みちみちと、薄く伸ばされた襞が軋んだ。
けれど先端の膨らみを咥え込んでしまえば、後は早い。
根元まで、押し入って来るのが、わかった。
僕は力を抜いて、規則正しく呼吸する。
変に力まなければ、辛くはないんだ。
もう、そのことを、僕はちゃんと知っていた。
最後まで入ると、そのひとは一度動きを止める。
僕の手を離して、さっきみたいに背中へと導いてくれた。
……嬉しい。
重なり合う体温が、恋情のようだ。
逃がさない。
離さない。
もっと、傍へ。
僕だけのものに。
「ぁっ、ぁっ、あっ!」
ずっ、と。
引き抜かれたかと思うと、また、深く深くへ押し込んでくる。
その、繰り返し。
的確にイイ箇所を突いて、幾度も、幾度も。
「らめぇっ、も、ソコ……だ、め、……出ちゃうぅぅっ!」
教えられたとおりに、淫らな言葉を吐きながら、僕は容易く達してしまう。
吐精と同時に、ナカがきゅんきゅんと締まって。
包み込んだものが、ぐんと質量を増した。
……あ、
僕のナカ、感じるんだ……。
感じて、くれているんだ。
それが酷く幸福な気がした。
満たされて、受け入れて。
そうしたら。
さっき出したばかりなのに、また……きもちよく、なる。
いっぱい突いて。
いっぱい汚して。
いっぱいイって。
ねぇ。
こういう時に、あいしてる、って言うの。
「ッ、あ、あっ、……っあああぁぁっ!」
身体の奥で弾ける熱。
身体の奥に注ぎ込まれる粘液。
身体の奥まで犯す欲望。
ぶちまけられると、それだけで、僕はすぐにイッちゃう。
イク、イク、って言うと悦んで貰えるのに、そんな余裕もなかった。
くったりと力を失えば、丁寧に横たえられる。
ずるりと出てゆく感触に、今一度、背筋が震えた。
ひくつく蕾から、大量に放たれた精液があふれてしまう。
「レン、さん……、」
僕は小さな声で名前を呼んだ。
そう。
そうやってイメージすればいい。
彼の人に抱かれる自分を。
傍に居ることを、許される自分を。
恋人に、選ばれる自分を。
僕はFFに入ったんだ。
僕はシャドウパラディンを選んだんだ。
僕は、強くなったんだ。
僕は、もっとずっと強くなるんだ。
だからいつも、レンさんを見ていればいい。
だから常に、レンさんを想えばいい。
「……レンさん。あいしてる」
声に出せば、現実のようだ。
快楽に浮いた涙の向こうに、僕は手を伸ばした。
レンさん。
何度も名前を呼ぶ。
なのに。
「……アイチ、」
力強い腕で、僕を抱き寄せてくれるのは。
「……櫂くん……、」
亜麻色の髪。
翠玉の眸。
真っ直ぐに僕を見て。
気遣うみたいに笑って。
嘘だ。
そんな。
僕は、冷水を浴びせられたような気持ちになる。
ほのかな余韻に酔っていた気持ちが、急速に醒めてゆく。
櫂くんと僕は友達だった。
チームメイトで。
憧れの、ライバルのような存在だったんだ。
こんなこと。
僕は。
まさか。
欠片も、望んでない。
望んだことはない。
……抱かれたいだなんて。
「……やめて、」
間違いだ。
こんな。
櫂くんを穢さないで。
どうか。
想い出くらいは、綺麗なままでいさせて。
僕は、悲鳴を上げた。