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□#3 まじわる あか、とろける あお
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真夜中に。
僕は覚醒した。

もう、すっかり日常で、慣れてしまった。

夢の中で、また。
……櫂くんに。

酷くされたり、優しくされたり。
後ろからだったり、前からだったり。
僕の部屋でだったり、教室だったり。
色んな抱かれ方をして。

ベッドの中で射精しているくせに、足りなくて。
身体の熱を持て余したまま、自分で慰める。

眠れない。
眠れない。
眠れない。

いつまでも眠れない。

新聞配達のバイクの音が、近づいて遠ざかり。
鳥のさえずりが聴こえて。
カーテンの向こうで白んだ空が、完全な朝に代わる頃。
ようやく、短い眠りに落ちる。

僕は一週間ばかり、そんな夜を過ごしていた。

朝は、当然起きられない。
叩き起こされてなんとか学校へ行って、授業中に寝てしまい。
帰ったらまた、塾の時間まで寝る。

FF本部には、あれから顔を出していなかった。
一週間だ。
それだけの間、勝負を投げていたら、順位は幾つ下がるのだろう。

百。
それとも二百。
もっと、か。

それどころか、デッキに触れても居ない。
PSYクオリア?
あの感覚も、忘れて久しかった。
もう使えないかもしれないし、もう用もないのかもしれない。

僕はヴァンガードファイトそのものを、やめてしまってもいいんだ。

こんなに孤独なら。
こんなに傷つくのなら。
こんなに汚れるのなら。

でもそうしたら、僕には何にもなかった。
学校では、森川くんと井崎くんがカードキャピタルに誘ってくれるけど、一度は僕から背を向けたチームメイトに、合わせる顔などない。
塾に友達はいないし。
クラスの他の子とも、これといって仲良くない。

僕は本当に、ファイトを知る前の、なんにもなかった頃の自分に戻ったのだった。

……いや。
あの頃なら、まだ。
僕は幼い頃の櫂くんとの想い出を、大事に抱えていたんだ。

今は、こんな。
毎夜毎夜、汚れきった夢を見ている。

僕はどんどん最低になってゆく。

眠ろうとして、眠れずに、寝返りばかりうつ。
その狭間に、じん、と、お尻の奥が疼いて。
僕は、櫂くんの腕の中で。
背に這わされた指が、狭間へと入り込む感触を膚で感じていた。

「……だめ、そこ……、」

あ、……。

また。
みだらな夢を、見ている。

僕は眠りを自覚した。

制止したって聞いて貰えない。
指先が、お尻の丸みを圧迫して。
ぎゅ、って掴んだ。

「ぁん!」

そういうのに、僕は、とても弱い。
少し乱暴に力を入れられたら、蕾がひくひくと震えてしまう。

其処を、まるく、撫でられると。
僕からお尻を振って。
欲しい、って、しちゃう。

つぷ、って。
狭い入口をくぐって。
指……ナカに、入って来た。

「んんっ」

たった一本なのに、内側がすごくいっぱいになった気がする。
指のかたちを、内側で感じる。
きゅうきゅう締めると、僕だって、すごく気持ちいい。

それは回転しながら、押し開くみたいに、根元まで埋まった。

「は、ぁ……、」

たかが指のはずなのに、僕はすごく熱くなってしまって、大きく息を吐いた。
少し力の抜けた隙に、ず、って、引き出される。

また、ねじ込まれる。
引き出されて。
突き入れられて。

じゅぷじゅぷ、って。
僕が、開かれてゆく。

あ、あ、あ……!

「挿れて、ぇ……!」

指だけでも、凄くイイのに。
悦すぎて、すぐにイっちゃいそうだったから。
僕は、あけすけな言葉で、おねだりした。

だって、すき、なの。
櫂くんと、繋がっていたい、の。

おっきぃの、頂戴。

言うと、僕はころん、と転がされて。
大きく、脚を開かされて。
丸見えの蕾がひくひくする、ソコに。
ずぶずぶ、って。

「……あーっ!!」

入って……来るっ!
どろどろに濡れた入口を、限界まで引きのばして。
おっきくって、かたくて、あつい、の……。

欲しがって震えてたところが、いっぱいに、なる。
さきっぽの膨らみから、きゅって締まったカリ首のかたち、筋走る茎の表面。
内壁から感じ取ってしまって。
そのせいで、余計に興奮した。

「あっ!あっ!……櫂くん、かい、くんっ!」

縋り付いて、胸を合わせて。
確りとした背中に、腕を回す。

腰を幾度も打ち付ける動きの最中に、僕のことも抱き寄せてくれるから。
溶け合うみたいに、これ以上ないくらいに、傍へ。もっと近くへ。

「出、るぅっ!」

僕は思いきりしがみついて。
すがりついて。
爪を立てて。
びくんびくん、って、二人の身体の隙間に、いっぱい熱いのを吐き出した。

くったりと身体が沈む。
……ね。
終わったら、優しく撫でて。
キス、して……。
名前、呼んで。

「……、」

なに?
よく、聞こえなかった。

アイチ、って。
呼んで、くれた?

「悪い子だね、」

……!!

真っ暗な水面に。
星あかりでゆらめく。
波紋のような、声。

予想もしていなかった響きに、僕は、暗闇の中でびくりと身を起こした。

漆黒の長衣が、真闇に、輪郭を失くして曖昧に溶ける。
仄かに浮かぶ紅は、舞う髪の曲線と、爛とひかる眸と。

うつくしくて、貴い、僕達の王。

「レン、さん……!」

「……僕のところに来れば、欲しい時にいつでも抱いてあげるのに。こんな……夢の中でまで、櫂としたいの」

「……ッ、や……っ!違、っ、」

だって、これは夢なんだ。
だから泣かなくていい。

僕は。
なのに。
おかしい程、狼狽していた。

裸で。
お腹にも、太腿にも、精液を撒き散らしたままで。

こんなところ、……レンさんにだけは、見られたくなかった。

「力から目を逸らしても、PSYクオリアはきみを離しはしない。おいで、アイチくん。きみの欲しいものは、僕が全部あげるよ」

「駄目、なんです。僕は、もう……っ」

泣かなくていい。
夢だから。

どうしたっていい。
レンさんにこのまま犯して貰うことだって、出来るはずなのに。

僕は、俯いて。
言葉につっかえる。

しゃくり上げてしまって、上手く喋れない。

「きみには元より、選択の自由などないよ。本部に来たくないのならそれでいい、……けれど僕の元から勝手に去るのは、許さない」

「……っ、でも、っ」

ゆるさない、って。
レンさんは、言ってくれるんだ。
勝手にしろ、じゃなくって、ちゃんと僕を呼んでくれるんだ。

夢でもいいよ。

いや。
夢で、よかった。

本当に、レンさんがこんなことを言ったら。
僕は甘えて、甘えて、寄りかかって、きっと今よりもっと駄目な子になる。

……そんな意味じゃないって、わかっていても。
強くなる可能性のあるファイターを、一人でも多く集めておくのが、FFの利になるからだって、わかっていても。

「言い訳はさせない。……おいで、」

ぐい、って。
顎に手がかかって、上向かされる。
僕よりかなり背が高いレンさんと、そうすることでようやく目線が絡んだ。

端正な相貌が、近づいて。
……キス、するみたいな。

「……っ、」

僕はひどく緊張して、目をぎゅってつぶった。

そうしたら、耳元に唇を寄せて。

「キスされると思った?」

レンさんが、僕の気持ちを読んだみたいに指摘するから。

あんまりにも恥ずかしくって、俯いた。

言葉もない。
……変な期待をして、僕は、本当に情けなかった。
レンさんだってそんなの、気持ち悪いに決まっている。

「ごめ……なさい、」

消え入るように、呟く。

「してあげない。欲しければきみからおいで、」

はぃ、って。
僕は、震える声で、やっと返事をした。

本当にレンさんが誘ってくれているんだったら、どんなにいいだろう。
そんなわけ、ないよね。

だって僕は、何処に行けば貴方と逢うことが出来るのか、それさえも知らない。
目覚めたらFF本部に顔を出す気になっているかと言われたら、そんなことは決してないだろう。
レンさんに逢えるかもしれないという期待より、また凌辱されるかもしれない恐怖の方が上だった。

夢だから、いいや。
夢だから、最後に。

僕は、顎に添えられたレンさんの手に、そっと、自分の手をかさねる。

夢だから。
このくらいは、許して。

ほんの少しだけでも、貴方の体温を感じていたいんだ。
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