長い夢

□世界の果てには蝶が舞う
1ページ/2ページ





「…………っ!!」



事件から2ヶ月がたった
だが未だに眠りは訪れない

今も微睡んでいただけだ


目を閉じるとあの日の光景が甦ってきて飛び起きる
この繰り返しだ

生暖かい空気が体にまとわりついていた
体は汗だくになっていた



再び体を横たえた
カタッ

その衝動でリュックから何かが落ちた

真守の誕生日プレゼントになるはずだった小さい箱

ここに持ってきていたのか?



妹を思い出す

あの目が…俺を見つめていた
「っ…!」
急いでリュックに入れた薬をさぐる
あった
でも水が見当たらないから噛んで飲み下す







「…………っはぁ……」
いつまで、こんな事が続くんだ


もう一度寝ようと試みて寝転んだが
まどろみさえ訪れてはくれない
諦めた俺は起き上がり小さな窓から外を眺めた
……澄んだ大空、うらめしいほどに


ふと小窓から蝶が入ってきた
そいつは俺の周りをフワフワと飛んで指を差し出せばそこに止まった
へんなヤツ…


「………?」
よく見ると羽になにか落書きがしてある
†の記号に見えないこともない

何故かこの蝶が気になり、その落書きについて調べた


理由は分からない
ただ俺の中で落書きをした人を探せ
と、小さな声がしていた



もしかしたらただ何かしたかっただけなのかもしれない


だが落書きの意味はなんの収穫もなくただ時間だけがすぎた
次にいく場所でなんの手懸かりも得られなかったら止めようと決めて墓地へ向かった



俺はそこでエマと出会った

エマにいきなりキレられて泣かれて訳のわからない奴らに追いかけられて
挙げ句の果てにはマフィアファミリーの仲間に誘われた


ナツメファミリアの人たちには世話になった
特にトガシは銃の師だ
それに基本的な闘いに必要な知識や実践は全てトガシから教わった


そして、俺の人生を変える出来事が起こった

マフィア同士のしがらみに苦しみ、一生を囚われた男の死

その男の残した最期の言葉



自分に重なった




共食いをする蛇…復讐の連鎖
人を殺せばもう戻れない


癒されてはいけない
復讐をするならば





充分に理解した



それでも俺はあいつを追いかける






俺はその事件から学び
そして、日本へ帰ることを決めた
ナツメファミリアと離れることに寂しさはある
でもエマが教えてくれた

世界の果てではいつでも蝶が舞っていることを



薔薇のピアスはエマに渡した
真守の代わり…というわけではないけれど
帰国の時、耳につけてやった

「ありがとう…エイシ」
「ん…」
こっちこそ


薔薇のピアスは不思議なほどエマに似合っていた

これは初めからエマのものだった気がする
エマの放った蝶が妹の薔薇のピアスのにおいに引き寄せられて俺をここへ連れてきてくれたのかもしれない



「じゃ…行くわ」






アディオス

ミ・アミーゴ










nextあとがき
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ