長い夢

□事件
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一年ぶりに帰ってきた
もう来ることはないと思っていた東京警視庁

エマやトガシ、エンリケに教わった事を思い出しながら捜査一課に入った




そして刑事になってだいぶたってから、忘れていた記憶が甦る


とある強盗犯を捕まえた日、苺のゴムの女の子を見かけた
面影はほとんど無く、大人びていたがあの哀しげな眼差しだけは変わらない






俺はまたその眼に囚われた





その日から何故かその子をよく見かけるようになった、が声をかける気にはならなかった

ただ見かけた日はなんとなく捜査も何でもうまくいった
……ような気がする




そして何年かがたち、彼女が高校にあがった直後
帰り道で彼氏らしき男と帰ってくるのを見掛けるようになった

その光景を初めて見たとき一瞬、ドロリしたものが湧いた
……まぁ他は特に何も思わなかったけど



多分そのころから石垣がやたらといとこにできた彼女の話をするようになった
面倒臭いと思いながらも、少しあの子と被るところがあったからいつもよりは話をきいてやった

まさか俺が思い浮かべている子と石垣が話している子が同一人物だとは夢にも思わなかった

石垣のいとこたちは上手くやっているらしい
そして同じように彼女も彼氏と仲良くやっているように見えた






ある日石垣が珍しく書類整理をしているのを見て驚いた
「お前…どうしたんだ」

「え?なんスか?」

いや、珍しいから


とは流石に言えず持っていたコーヒーを啜りながら適当に仕事に戻ろうとすると石垣にしがみつかれた
パシャッ
「あつ…」

「先輩!!あのちょっと聞きたい事があるんですけど!」

いや、コーヒー零れて熱いんだけど

「あの…センパイって」

まだしがみついたままのバカの頭にコーヒーを半分かけてやった

「うぁっちゃあぁ!!
なんすかセンパイ!」

「いや、普通にウザかったから」

滝のような涙を流しだしたけどキモいから無視

「で、何」



「…ゴホン
あの〜センパイってするときどうやって誘いますか?」

「ぶほっ…
…………急になんだ」
残っていたコーヒーを吹いちまった

「いやぁ…慶太に聞かれて
なんだかんだ我慢してるみたいなんスよ
でも俺じゃ頼りないんでセンパイに聞いてみたんス」

「……あのなぁ…仮にも警察が未成年者の淫行を推奨すんなよ」



一瞬動揺した
石垣に教えられる筈がない
誘ったことなんてない


告白されて
付き合って
適当に過ごして
言われたらやって
冷たいと言われて
いつの間にか自然消滅
それかヒステリーを起こした女に怒鳴られ一方的な修羅場になっておしまい




俺には女という生き物が理解できない

だからアドバイスなんてやれない






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