長い夢

□謝罪
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体がフワフワする…

暖かい?
これは誰?


「お、悪ぃ
起こしちまったな」

「あ…」

目の前には色素の薄い目
昨日の刑事さんだ
泣き疲れて寝てしまった私をベットの上に寝かせてくれているところだったみたい



「すいません重いのに…っ!」

「や、別に重くないけど」


「名前ちゃん!
目、覚めたの?!」

「石垣さん…?」





刑事さんのうしろから石垣さんが出てきて、驚いてる間に石垣さんが捲し立てる



「あのね!?俺らさっき名前ちゃんの住むとこについて話してたんだけど慶太の家に行ってくれるよね!?」

「………………」


現実を突き付けられた気がした

「あ…あの……」

「…はぁ」
銀髪の刑事さんはため息と共に容赦なく石垣さんの頭に拳を降り下ろした


「あっだあぁぁぁ!!!」

「あ……」

「…ごめんな名前ちゃん
こいつ馬鹿だから
……とりあえず今日はうちに来な
ここじゃゆっくり休めねぇだろ」

「ちょっセンパっうぐ!」

石垣さんは再び頭に拳を落とされて地面でバタついてた

「…送ってく、来な」

「え?あっ……でも…」
痛がってる石垣さんもほっとけないけど、知り合って間もない人の家に押し掛けるのもどうかと思う
戸惑っていると刑事さんはスタスタと行ってしまった


「とりあえず、だから
早くして」

「あっはい!」
ごめん、石垣さん…

私は足の長いその刑事さんに置いていかれないよう小走りでついていった


「ん?あぁ悪ぃ、早かったな」

「はぁッ…いえっ」

「……いや…んな息切らされてたらなぁ…」

少し困った顔をして頭をかく刑事さんが可愛くて笑うと
また困った顔になったから車の中で泣くほど笑った
久しぶりにこんなに笑った気がする


「あははっ……は……
…慶太、死んだんですよね…?」

笑っていても離れないその事実
泣いても慶太は戻ってこないのに


過去を振り返って悩んだり泣いたりするのはもう止める
きっと本人も喜ばないから

でも今だけ、泣いてもいいかな…


「……泣いていいよ」

「…え……」

「…………
…無理して笑われるよりいいから」

「っ…!」

どこまで優しい人なんだろう
私はその言葉に甘えて車の中で思いっきり泣いた





彼女はアパートに着くまで泣き続けた
俺は車を停めて彼女を部屋に迎え入れた

「…………汚なくて悪いけど
…ここ座ってて」

「はい…」


ソファーに座らせて急いでパジャマになりそうなものを何着か出す

「え……?」

「…俺のだけど良かったら着て
んで、茶でも出してやりてぇんだけどコーヒーと酒しか飲まなくてな……」

「いっいえ!おかまいなく!」

「まぁ…風呂入んな
バスタオルは一番上の棚に入ってる
後…なんか欲しいもんあったら言いな?今買えるものなら買ってきてやるから」

「いえっそんな…泊まらせてもらえるだけで嬉しいのに……」

「…気にしなくていーよ」

戸惑う彼女の頭を撫でて玄関へ向かう


「あの……出掛けるんですか…?」

「あぁ…まだ仕事残ってるしな
あ、酒以外なら飲んでいいから
部屋もいじくっていーよ
じゃあ……ゆっくり寝てなよ」


「は、い…」

今はその気遣いが痛いほど嬉しい
私はそれに甘えて、刑事さんを見送ったあとお風呂を使わせてもらうことにした






ポチャン…

「………ふー……」

疲れきった頭と体が温かいお湯に癒されていくのをはっきりと感じた
私は静かに湯船につかっていた



でも
シャワーから水が滴る、そんな些細な音で曖昧だった記憶がフラッシュバックする





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