短い夢

□名前
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最近おかしい



弥子ちゃんの友達の名前ちゃんを見ると無性に苛つく
特に何をされたわけでもなく、それこそ関わりなんてほとんどないのに







「笹塚さーーん!」

パタパタ走ってくる弥子ちゃん
その後ろから遠慮がちに声をかけてくる名前ちゃん

「こんにちは…」


「……こんちは」

どうしても無愛想にしか出来ず、心のなかで首をかしげた


「またなんかあったの?」
これは弥子ちゃんに対する問い掛け



「ん〜ぼちぼちってとこですね」

何それ
おっさんみたいな答え方だなと思っていたらそれまで黙っていた名前ちゃんが途端に声をあげた



「あのっ!……私お邪魔みたいだし帰りますね
弥子もバイバイ」

「……………」

「えっ?なんで?何か用事あったっけ?」

「ないよ?…でも、弥子は刑事さんと話あるんでしょ?聞いてたら失礼だから、じゃあねっ!」




まただ
何度も話しているのに刑事さん、刑事さん…
嫌われてるのか?


「はぁ…」

名前ちゃんが居なくなったのを確認して溜め息をついた

「?どうしたんですか?」

「……や、別に」



名前ちゃんの友達でもある弥子ちゃんには当然言えず、家に帰ってもずっと考えこんでしまった






あれから数日

俺はまだ考えていた



彼女の事を考える度
おかしくなる


なんで嫌われてる?
そもそもなんで俺はこんなに気にしているんだ?
全く分からない





霧がかったような錯覚に陥り、苛つきを解消するために石垣の玩具を叩き割りながら過ごした

「それウザい」

「へ?うわぁぁぁぁぁ!!死ぬなぁ!(泣)」

「ゴミんとこ捨ててこい
行くぞ」

まぁいつも通りだ
現場に向かい、色々と調べたがなかなか捜査は進まず
煮詰まった俺は休憩をとることにした

「じゃあセンパイ、ちょっと署に戻ります!!
大和を助けないと!」

「あ、そ」

助けても壊してやるけど
…捜査が進まないのお前のせいだって分かってる?


俺は幸せな石垣に感心しながら1人でぶらつく事にした





「あれ?刑事さん?」

「………………………」


振り向かなくても分かる
この声は名前ちゃん
俺を悩ませている張本人だ



「あぁ…名前ちゃん」

気付かなかったふりをしてゆっくりと彼女の方へ向く

「お仕事ですか?頑張ってください!」

それじゃ、と言って通りすぎようとする彼女の腕を咄嗟に掴んだ
やってからしまった、と思っても後の祭りだ


「………あの…?」

「…丁度休憩中だから茶でも飲まない?」


どこのナンパだよ
と心の中で自分で突っ込みを入れた

「…?いいですけど……」




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