短い夢

□隣の君
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大学の講義



正直に言ってしまえば
ご飯を食べた後の講義は特に眠気を誘う

それでも頑張って受けてるんだから褒めてほしいくらい



お昼からの講義は一人で受けてる
だから見晴らしのいい窓側の後ろの席を、勝手に、私の特等席にしている
いつも隣や前は居ない
皆なるべく前へ詰めてるから




でも今日はちょっと違う
私の特等席の隣に、人が座ってる


「?」

見たことある人だけど…
学年トップレベルの人だっけ?


「…」
近づいてくる私を不思議そうに見て、私が隣に座りたいと気付いたのかカバンをどけてくれた

「ありがと」

「ん」

短い一言だけの会話をして黙々と講義を受ける


しつこいけどもう一度だけ
やっぱりご飯を食べた後の講義は眠い…
「ぷ…」

横から吹き出す声が聞こえて隣を向く
するとさっきの人が笑っていて
あ、可愛い…なんてボーっと考えながら重たい頭と口を動かす

「…へ?」
でも出たのは寝ぼけた変な声

「アンタ、窓に頭ぶつけてる」

「ちょ…笑わないで下さいッ」

格好いい人に笑われ、しかも間抜けな声を聞かれたのが恥ずかしくて目が醒めた

「無理」

「笑いすぎ…!」


決まりが悪くて目を反らしたけど
その人はまだクスクス笑いながら続けた

「アンタ、いつもこの席に座ってんの?」

「…はい、そーです」

「そーいえば前もぶつけてたの見たよ俺
後ろ向いたら窓にもたれ掛かってたからよく覚えてる」

「嘘〜…」
恥ずかしすぎる…!

「まぁ…もう少しで試験だし頑張ろーな」

「うん」





その後はその人の言う通り
眠いながらも頑張って講義を受けた


「お疲れさん」

「お疲れさまー」



講義が終わり、挨拶だけ交わした





「あれ?」

「…」

一週間後、同じ講義を受けるために前の教室に行くと
またあの席にあの人が座っていた

前回と違うのは私を見つけただろう瞬間にカバンをどけてくれたことだ

「ありがと」

「ん」





それ以降、その席は私達の特等席になっている







隣の君




名前、聞きそびれた…



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