短い夢

□隣の君〜マンション〜
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私には最近気になる人ができた


捜査一課のエリート、笹塚さんだ
アヤ・エイジアのストーカーの件以来どうしようもなく格好良く見える…


多分笹塚さんは高校生なんて対象としても見ないだろうし、報われる確率は0に近いけど構わない

憧れの気持ちがないわけじゃないから
大人だから、という理由もあるから好きだとは言いにくいところもある



だから私はただ笹塚さんを見るだけだった

転機が訪れたのは大学に入学する時
マンションを探している時に丁度笹塚さんが事務所に来て、笹塚さんが住んでいるマンションを勧めてくれた


「…俺のマンションなら値段の割にいいんじゃねぇかな」

「本当ですか?!
ならそこにします!」

「え、…そんな簡単に決めていいの?」

「はいっ!
笹塚さんが近くに住んでるなら安心ですし」

「………へぇ…そーなの」

そうなんです
笹塚さんの近くっていうのが一番のお得感かもしれません







私は笹塚さんに頼み込んで
家の造りを見学させてもらう、という名目で今度の日曜にお邪魔させてもらうことになった



そして、待ちに待った笹塚さんのお宅訪問
「…時間なかったから汚いけど」

「全然かまいません!
逆に私こそおしかけちゃって申し訳ないです……」


これは本当に申し訳ないと思ってる
でも正直、笹塚さんの家にお邪魔させてもらってる感動の方が遥かに大きい

「別に、俺は構わないけど…
…あがんな」

「お邪魔します!」



部屋は意外と広くていい感じだった
でも生活感はほとんど感じない
あると言えばゴミが散乱してるくらい
こざっぱりしてるというか…なにも無いというか…
思わず口が滑った

「ここ、本当に笹塚さんの家ですか?」

「?…そーだけど」

「なんか…生活感ないですけど」


ここまで言ってしまってから相当失礼な事を言った事に気付いた

「すっ…すいません!
なんか無駄なものが無いって言うか…!」

「あー…いいよ
何も無いのは確かだし」

そう言って頭をかきながら苦笑する笹塚さん

「…まぁ部屋の造りわかったら問題ないでしょ?」

「……まぁ、それはそうなんですけど…」

「…とりあえず座っときな
コーヒー飲む?」

「飲みます!」



私はゆったりとしたソファーに腰を下ろして笹塚さんの淹れたコーヒーをいただいた

「美味しい!」

「…どーも」
流石、いつもコーヒー飲んでるだけあって淹れるのも上手い
というより、笹塚さんが淹れたコーヒーを飲めたのが嬉しくてテンションも上がっていく



そして
ソファーに並んで座っているこの状況も手伝って、私はどんどん笹塚さんに質問していった


「不便なことってあります?」

「…や、特には」

「何日くらい家にいるんですか?」

「…まちまちだな……
…てかそれ関係ある?」

「あります!
一日中居ないと分からないこともありますから」
なんてもっともらしいことを言って笹塚さんの私生活を根掘り葉掘り聞いていく


「いつも何処に買い物いくんですか?」

「…さっき通ったスーパー覚えてる?そこ」

「意外と普通に買い物するんですね、忙しそうなのに
料理とかするんですか?」

「…まぁ一応」

「得意なのは?」

「…和食?魚ならさばける」

「なんとなくイメージ湧きますね
…今度作ってください!」
冗談半分でそう言うと、意外な返事が返ってきた


「ん、いーよ」

「…………………
あっありがとうございます」



多分なんとも思ってないんだろうな…
そう思うと少し胸が痛いけど、またお邪魔する機会を貰えたんだから…いいよね




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