書店

□hang flag
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「棚瀬っっ!来月の15日って仕事なかったよな」
坂崎が楽屋に戻って来るなり聞いた。
「確か何もなかったと思いますが…どうかしましたか?」
「んん〜。ちょっとね」
今日のライブに、坂崎の同級生が来ていたのだ。
ライブ終了後は、別室で長い間話していた。
戻ってきた坂崎は、かなり機嫌がいい。
「何かあったのか?」
思わず聞いてみる。
「同窓会の招待状!もらっちゃった〜!」
白い封筒を、俺の目の前で振って見せる。
「…そんなに嬉しいか」
「あったりまえじゃん。久しぶりだしさぁ」
坂崎は自分の前に封筒を戻すと、何度も中身を確かめている。
マネージャーの棚瀬は、スケジュール確かめてきますね、と部屋を出て行った。
「…嬉しいものか?」
「…高見沢は、嬉しくない?」
坂崎は小首を傾げてみせる。
子供っぽい仕草に、思わず口が緩んだ。
「あんまり、嬉しくないな」
坂崎が俺の前の椅子に座る。
「あんまり、会いたくない?」
的確に俺の心の内を突いてくる。
だが、柔らかな口調が、俺に次の言葉を促してくれる。
「会いたくない…と言うより、会えないんだ」
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