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□雨玉-アメダマ-
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毎週水曜日、君が来る。
*雨玉-アメダマ-*
最近水曜日のお昼になると必ずやってくる。
約束したわけでもない、ある水曜日に突然来てそれ以来、水曜日の昼は君との時間……
「さーかえぐちっ」
教室の前の扉から少しだけ顔を出して声を張り上げる。
「あれ?今日は早いね」
「そう?…まぁいっか、それよりメシっ」
誰よりも早く弁当を広げ手を合わせて箸を持つ
理由を聞く事もない。
何で来たの?
聞く必要ない。
向こうで食べなくて大丈夫?
聞きたくない。
俺なんかとで良いの?
聞きたくない、聞きたくない。
一緒にいて楽しい?
「いつも思うんだけど、そんな少なくてお腹空かない?」
「うん、大丈夫だけど…水谷こそ食べ過ぎじゃない?」
水谷の弁当箱は、栄口の倍はあるだろう
「これくらい食べないと夕飯までもたないー」
箸と弁当箱を掲げる。
「…って部活前にパン食ってんじゃんか!」
「!…そうだな、まぁ気にすんな」
泣いてるんだ雲の上の誰かが……
水谷とご飯を食べる日に限って雨が降る、でも嫌いじゃない基本的には好きだ。
雨を恨むのは野球の事を思うとだ、野球は楽しい…あと、俺の居場所。
「ねぇ巣山は?」
「水曜日は別の奴と食べてるよ、水谷が来るようになってからかな」
「えっ…マジすか…」
少しだけ苦い顔をして直ぐに弁当へ視線を落とす。
「水谷のせいじゃないって」
巣山は俺の気持ちを察したのだろうか……
水谷がきて2回目ぐらいに、別の人と食べると言って水曜日だけいないんだ。
゛ほら、あれだろ、゛
っていなくなった巣山
察してもらっちゃうってだけでも恥ずかしいのに、ってか察して貰うほどバレバレだったのかな……
「はぁ……」
「どした?ため息なんて」
「えっいや、考え事ってゆーか」
「そ、……何かあったら言えよな」
優しい一言、でも本人に相談できる事じゃないし…
時間が止まったらいいのに。