book

□雨玉-アメダマ-
1ページ/4ページ


毎週水曜日、君が来る。







*雨玉-アメダマ-*








最近水曜日のお昼になると必ずやってくる。
約束したわけでもない、ある水曜日に突然来てそれ以来、水曜日の昼は君との時間……


「さーかえぐちっ」

教室の前の扉から少しだけ顔を出して声を張り上げる。

「あれ?今日は早いね」


「そう?…まぁいっか、それよりメシっ」

誰よりも早く弁当を広げ手を合わせて箸を持つ





理由を聞く事もない。


何で来たの?





聞く必要ない。


向こうで食べなくて大丈夫?





聞きたくない。


俺なんかとで良いの?






聞きたくない、聞きたくない。


一緒にいて楽しい?



「いつも思うんだけど、そんな少なくてお腹空かない?」

「うん、大丈夫だけど…水谷こそ食べ過ぎじゃない?」

水谷の弁当箱は、栄口の倍はあるだろう

「これくらい食べないと夕飯までもたないー」

箸と弁当箱を掲げる。

「…って部活前にパン食ってんじゃんか!」

「!…そうだな、まぁ気にすんな」


泣いてるんだ雲の上の誰かが……

水谷とご飯を食べる日に限って雨が降る、でも嫌いじゃない基本的には好きだ。

雨を恨むのは野球の事を思うとだ、野球は楽しい…あと、俺の居場所。


「ねぇ巣山は?」

「水曜日は別の奴と食べてるよ、水谷が来るようになってからかな」

「えっ…マジすか…」

少しだけ苦い顔をして直ぐに弁当へ視線を落とす。

「水谷のせいじゃないって」 


巣山は俺の気持ちを察したのだろうか……
水谷がきて2回目ぐらいに、別の人と食べると言って水曜日だけいないんだ。


゛ほら、あれだろ、゛


っていなくなった巣山
察してもらっちゃうってだけでも恥ずかしいのに、ってか察して貰うほどバレバレだったのかな……



「はぁ……」


「どした?ため息なんて」


「えっいや、考え事ってゆーか」


「そ、……何かあったら言えよな」


優しい一言、でも本人に相談できる事じゃないし…



時間が止まったらいいのに。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ