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□雨玉-アメダマ-A
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気休めもなく6時限目が始まる。何事も無いように始まった授業に違和感を覚えた。
非日常が俺の前で起こり、サボった俺は何も問われず授業に参加する。
ドキドキする。
今までに無かったことが起こる。
俺は胸の中のざわめきに耳を貸してそれ以上の"非日常"を求める。
「暇だ…」
窓の外を見る
雨はやむ気配を見せずに降り続く
授業を真面目に受ければいいんだけど…あいにく自習
勉強する気にもならない
考えているのは…あの1シーンのみ、俺に深く響いたあの言葉だけ
*
最近自習が増えた。
テストが近づくと各教科は範囲を終え、自習になる。
唯一俺が苦手な教科は数学で、数字がダラッと並んでると頭がパンクしそうになる。
だからテスト前数学に関しては、西広や阿部・巣山に教えてもらってる。
同じクラスってこともあって巣山に聞く事が多いけど、巣山もダメなら西広先生と阿部だよりだ。
赤点をとったらヤバい
それが俺たち野球部。
だからテスト前は必死で勉強する。
「数学やだな…」
6時限目が終わりHR後の掃除中にそう呟く。溜め息と一緒に吐き出した声を、拾ってくれる人は居なかった。
「部活遅れるぞ」
掃除が早く終わったのか、とろとろやっていた栄口に巣山は淡々と言った。
「うん、今いくよ」
一見止まりそうな位遅かった手を早め
バックをもって部室へ走った。
*
いつも通りの練習
今日も水谷とはほとんど会話をしない。
いつも通り
でも今日は違う非日常
自信がついたはず。
声かけても罰当たんないよね?
部活が終わり、まだ汗が引かない中部室で着替える。
人より早く着替え終わったから、少し涼しい外で水谷を待った。
夕方に吹き抜ける風は、髪をふわっと持ち上げる。
目の前の部室では感じられない風だ。
部室からはガヤガヤと田島たちの騒ぎ声が聞こえる。
その中に水谷の声もあった。
「あっ」
部室からみんなが出てきた。
花井、三橋、阿部、西広、田島、巣山、泉、沖
あれ?水谷は?
部室にはいたはず…
栄口は部室に歩み寄った
居たとしても忘れ物したって言えば良い、問題ない。
背後を見てからドアノブに手をかける。爪先を見つめたままドアを開けた。