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□雨玉-アメダマ-B
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「ふわぁー」



朝の下駄箱。
少し埃臭いその場所。



「あっ…おやよー」


「あーみずたにーおはよー」


目を擦りながら挨拶を交わす。水谷は相当眠そうだ。

「眠い…」

「うん…眠い」

栄口は昨日水谷に教えるために勉強をしていた。少しでも分かりやすい様に。


「俺慣れないことしたよ…」

水谷はと言うと、素直に栄口が言った通り予習復習をしてきたらしい。


「勉強してきたんだ」

「うん……ふわぁー……んー…後でのぉとみせるねぇー」

「え…あぁ、うん…」

まさかやって来てくれるとは思わなかったらしい。
自分も勉強をしておいて良かったと思った栄口だった。







「眠い…」

栄口はいつもに無い眠気に襲われていた。

今は4時限目、この時間まで折角耐えたと言うのに今になって耐え難い睡魔の波が栄口を飲み込む。

「や…ば………」

頬杖を突いていた机に突っ伏してそのまま目を閉じた。





授業終了のチャイムと共に、いつも水曜日しか来ない彼がその日の様にドアの影から顔を出す。


「さかえぐちー」

返事はない。栄口は今も夢の中だ。


「寝てる……」


起こす?起こさない?

少し待ってみるそう言う答えもある。

水谷はいつも誰よりも早く開けるお弁当箱を開けずに栄口を眺めた。


生憎今日も雨



「さかえぐちー?」

早くしないと昼休みが終わってしまう、お昼ご飯を食べる時間を逆算すると今起こさないとまた5時限目をサボってしまう事なる。

まぁ2日連続でサボる訳にはいかないわけで。


「さかえぐちー」

返事はない

「さ・か・え・ぐ・ちー」
顔を近づけて少し大きな声で名前を呼ぶ。

「んっ……」

「昼休みが終わっちゃうよー」

「ふぇ?………うわああ…水谷っ!いつから居たのっ?」

凄い勢いで起床。目をぱちくりさせながら水谷を見る。

「つい10分前くらい?」
視線の先は時計だ。

「えっ!…もっと早く起こしてくれたら良かったのに……」

ずっと栄口を眺めて居たなんてまあ言える筈もない。

「いいのっ、ささ食べまひょ」

いつも通り弁当をさっさと開けて食べ始める。


今日は金曜日だよな…
どうして…


「きききょうはどしたの?」

聞きたかった言葉を1つ聞けた。


「ん?…あぁ、ノート渡しに来たんだ」



ついでなんだ



「あと栄口と飯食いたくてっ」


にたっと笑う



「そ…」

笑みが溢れてしまうのを
必死で堪えた。


「ねー今日はどこでべんきょすんのー」


「どこでもいいよー」

栄口も弁当を開く
そして食べる

「んじゃ栄口ん家ね」

そして吐く

「ゲホッゲホッんで俺のいえ?」


「どこでもいいよーって言ったの誰だよー」


「はいはい…分かったよ」
諦めたように嬉しそうに言った。
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