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□雨玉-アメダマ-C
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「なに?」
「今日はみんなと勉強会しようよ。まだ1度しか出てないんだし…他にも教わりたい教科とかあるでしょ」
「むぅー」
栄口には水谷の返事はわかっていた。
「いいよー」
断れない事は知っていた。
水谷はあまり自分の内を人に話さない。
周りに合わせているような所も時たまあった。
「じゃ準備が出来次第図書室ね」
「うぃー」
7組をあとにした。
*
ここが本当に図書室なのかと、栄口は疑った。
図書室にあった静けさは既にに消え失せていた。
「おー栄口来たのか」
「うん」
迎えの言葉を吐いた主将の顔は何故か蒼白で、そんなに酷いのかと1歩後ろへ下がる。
「今なにやってるの?」
後ろにいた阿部に話しかける。主将に話しかけても会話にならなさそうだったからだ。
「あーこっちの机が数学、こっちが国語だ」
栄口の正面の机を指差す。
「早速出番って訳だ」
少し嫌味ったらしく言う。
「まぁそうゆうこと」
呆れた顔で笑うと阿部は直ぐに数学の机の方に行く。阿部も教える立場だった。
「よいしょっ」
席に座ると正面には田島と三橋が頭を抱えて教科書とプリントとにらめっこ。どんなに交互に見たって、理解しなければわかるはずもない。
「う゛ー」
「ん ー」
「何がわかんないの?」
少し乗り出して二人に問う
「……全部」
「………うぐっ…」
二人の顔はこれでもないくらい真っ青で、三橋なんて泣いてしまいそうだ。
「わかった最初っからやろう」
「うん」
テストがあることを知っていたなら、自分達がこうなることを分かっている筈なら事前に勉強をしておけばいいのに。
「じゃあここから」
教科書を開く。栄口の教科書は綺麗だ。大事なところや、自分に大切な所を色々な色のペンで線が引いてある。
それに代わり三橋も別の意味で教科書とノートが綺麗だ。新品のように何も書き込みがない。つまり寝ていて何も書いてない。
田島の教科書は逆に落書きだらけ、所々何やら染みがあった。
「う」
「ん…」
「えとじゃあ、この話が書かれたのはいつでしょう?」
先日水谷にした質問を繰り返す。
「わっかんねぇ」
「う お!…へー…あんじだ…い?」
言葉になっていないがここは良しとしよう。
「せいか「きったよー!」…ぃ」
突然のところで水谷の登場。
こいつはここをどこだと思っているんだ。周りから冷たい目線が集まる。
「おそかったね水谷」
「あの後ごみ捨てにも行かされちゃって」
一息ついた水谷は国語の方の席へ座ろうとした。
「ダメだよ水谷は向こう」
栄口の指の先には数学の席
「えー」
「えーじゃないよ、今日はいつもやってないのやんの」
「…わかった」
張り切って出した国語の教科書をバックにしまい、数学の教科書をだして向こうの席へと、とぼとぼ歩いた。
「えっと、で……三橋が正解ね」
*
あの後はとても目まぐるしかった。
栄口も阿部も行ったり来たりして休む、と言う言葉は無縁であった。
教えてもらってる奴等の頭は、少し進歩した……とは言えない…
水谷の方を少し見ると阿部に制されて、黙々とやっていたが、勉強をしている間に栄口は気付いた。たまに視線を感じたりする事を。そちらに視線をやると目があったりした。