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□ハニー×ハニーA
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繰り返しの日々。

高校、大学もそうだったが勉強をしにいっていた訳だし、授業内容だって進む。

繰り返し、とは違った。

でも今はどうだ?

繰り返しの繰り返し。

面白味がない。

人間関係は悪い方じゃない、でも1つの箱の中で同じ事をして行ったり来たり。

少し退屈だ。


仕事に面白味を求めてはいけないとは思っていない。

現にプライベートでは水谷や栄口、その他諸々誘ってくれる人がいて、楽しい訳だ。

仕事場で出会った人が、今の阿部の主な人間関係を占める。

「仕事、行くか」

ジャケットを着て鞄をもち家を出る。

定時にくる電車に乗り仕事場を目指す。

いつも毎日、あの花屋の前を通っていた。気にもしなかったし花屋があると認知していただけ。
でも昨日のたったあれだけの事で、阿部にとって意味のある場所に変わった。

無意識に花屋を覗いてしまう。

「うわっ」

人影が突然花屋から飛び出して来た。

「すすすすっすみませんっ…」

あ、三橋さんだ、そう阿部は思った。

予想はその通りで、阿部の顔を見るなり三橋は先程より増して申し訳なさそうな顔をする。


「昨日ぶりですね」


「あわわぁ…なんかもうすみま せん」

これでもかと頭を下げる。
通勤時間だし目を引くのでやめてほしい。

「いえ大丈夫ですっ…頭…上げてください」

聞こえないようにため息を吐く。ため息なんて見られたらまた変な気を使わせてしまいそうだ。

「うへっ…すみませ……」
「謝んなくて…いいんすよ?」

三橋はハッとしておどおどしはじめる。


「えっ…あ…すみま…いや…〜〜〜っ」


「ふっ」

思わず笑ってしまう。
笑う阿部をみて少し安心したのか、おどおどがおさまる。

「あっ…あの…」

突然口を開いたのは三橋だった。

「ん?」

「もう来てくれた、んです か?」

道の真ん中で俯きながら阿部に問う。何故かオフィス街には変な光景だ。

「ん?」

「昨日のお礼…で……あのっ…まだ…何も…よ」

しっかりと頭の中で整理した言葉を言語化してほしい。すんなり頭に入ってこない。

「いやっ…別に…いつも通るし」

「えっ?」


「俺の勤め先がこのちょっと行ったとこにあるんだ」

自分が来た方向と真逆を指差す。

「え、○○コーポレーションです か?」

「あぁそう」

何で知ってるんだ?と言わんばかりだ。

「ゆうめいですよ ね」

「うん?…あぁ…」

少し早く家を出てきているから少しの立ち話位全然平気なのだが、間が持たない。言葉に詰まる。

「すごい沢山お仕事できそですもんね、」

「はぁ…?俺がですか?」
「はい…」


「それはどうも」

─沈黙

「あのさ…俺も仕事なんで、行きますね…」

「あっ…はい…」

まだ俯いたままだ。
一向に顔を上げない。

「じゃっ」

手を上げて三橋に背を向ける。

「あっあの…」

「まだなんか?」

「名前…教えてください」


「え…」

あっ…名乗ってなかった。あちゃーと心の中で思う。三橋は俺の事名前も知らずに会話をして、お礼なんかしようとしていたのか…

「阿部…隆也、お前は?」

「えっ…あ」
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