dream

□満月
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‐満月‐

満月を見ると貴方を思い出す。貴方はいつも月を眺めながらたった一人の家族、弟のサスケのことを考えていた。

その胸の内は誰にも想像できないくらいとても複雑だっただろう。













私は暁の医療室にいる医療忍者。暁のメンバーの怪我を治す他に、薬も作っていた。…そう、イタチの病気の薬だ。あの頃がなつかしい。あれから一年が過ぎたのか…。






‐一年前‐

「できるだけ長く戦っていられる薬を作ってくれ。」

イタチさんが私にいきなり言ってきた。


「…どうしたんですか。あなたはもうそれほど戦える身体じゃないですか。あなたも分かっているでしょう?今のあなたが激しい戦いをするなら死に陥りますよ…。」


「分かっている。だからこそ作ってもらいたい。」


「私はそんなみすみすイタチさんを殺すような薬、作りません。」


「これで最後なんだ…。頼む。」

イタチさんの意志は固かった。


「最後…?」


「あぁ。これが最後。」


「…どういうことですか…。」


「…。」


その時顔を上げたイタチさんの写輪眼が私をすっと見据えた。


最初に見えたのはたくさんの屍。その中心に立っていたのは…幼少期のイタチさんだった。


場面が変わる。食卓に父と母、そして弟とイタチさん。

森で弟とかくれんぼ。
とても幸せそうに笑っていた。


だかまた場面が変わる。
父に木ノ葉のスパイとして命じられ、木ノ葉に一族の情報を流すイタチさんの姿があった。


そして…


満月の夜。



自分の一族の人達を殺す彼の姿があった。父も母も崩れていく。

そして弟に近づく…


だが彼は弟だけは、サスケだけは、殺めることができなかった…。


そして涙を流して木ノ葉を去っていった。








そこで幻術が解けた。


だがこれは現実に彼に起こったことだったのだ。

一筋の涙が流れた。





「俺は平和の為に自分の一族を殺めた。だがサスケだけは殺せなかった…。サスケは俺を恨み、もうすぐ復讐しに来る。」





「自分の弟に殺される気ですか…。」



「あぁ。サスケは俺を殺すことでうちはの英雄になる。だが簡単に殺られるわけにはいかない。サスケには大蛇丸につけられた呪印がある。それを解いてやらねばならない。だから簡単に死ねない。」




「どうしてそこまでするんです?」






イタチさんが真っ直ぐ私を見た。

「…理由などいらない。ただ…あいつは、サスケは里よりも大切だった。だから俺はやらねばならない。その為にお前の協力がいる。頼む。俺はこの為に生きてきた。」

イタチさんの目に幻術をかけられていなくても吸い込まれそうになった。


これがイタチさんの真実。

すごく悔しかった。

イタチさんはずっと一人で苦しんでいた。
なのに、助けられなかった…。

私に今出来ること。
それは目の前にいるイタチさんの死を手伝うこと…。

何もかも分からなくなる。






でもイタチさん…貴方は私を信じて全て話してくれたんですよね…?



薬なんて私に幻術をかけて作らすことだって可能でしたよね…?







「…分かりました。私に作らしてください。私に手伝わしてください。」



「ありがとう…。」



「ただ強い薬なので副作用もそれなりに強いことを覚悟していてください。出来ることの努力はします。」



「分かっている。ありがとう。」




私は手伝うことに決めた。





そして一週間かけてイタチさんの為だけの薬を作った。



イタチさんは私から薬を受け取り、礼をいってすぐアジトから出ていった。



それから二日後‐


いつものように暁のアジトで薬を調合していた私の所に荷物が届いた。


…いや、荷物が自分の足でやって来たといった方が正しいか。


荷物は真っ黒な色をしていた。
私の調合室で泣いていた。



その時私はイタチさんの死を知った。





同時にイタチさんが全力で戦って死んでいったことも分かった。





だって荷物が、イタチさんのカラスがあんなに嬉しそうに鳴いていたから…。



私は地面に座り込み、大声で泣いた…。






















あれから一年が過ぎた今、戦争は相変わらず絶えません。イタチさんの願った世界とは正反対です。イタチさんの弟は憎しみに満ちています。イタチさんは何の為に散っていったのでしょうか…。





貴方はたった一人をずっと見ていました。
貴方の弟が羨ましかった。

空の上で貴方は今も弟だけを見ているのでしょうか。


…でも今日の満月はいつもと違います。貴方の瞳のように真っ直ぐでとても綺麗です。貴方に見つめられているような気がします。








でも…これは嘘じゃない。
何か感じる。

私はふっと振り返った。

























貴方の眼が私を見ていた。



吸い込まれそうになる。



まるで貴方の瞳は満月のように、万華鏡のように、綺麗でした。
 

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