波乱万丈人生記
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「何で忍足なんかと付き合ってんだよ!」
これは赤也の言葉。
この言葉に逆にあたしは驚いた。
「え、赤也知らなかったんだ?」
「知らねえよ!」
赤也から間髪入れずに返事が返ってくる。
だって、一緒に暮らしているんだから当然知っているものだと…
「まあ、なまえに彼氏が居ようが俺は気にせんがのう…」
気にしろよ。
モラル的な面からみてもそれはおかしいだろ。
仁王は人格形成の時点でなにかがおかしい気がする。
「あれ、うちの学校の人たちは知ってたんだ?」
そう、氷帝のみんな(跡部除く)は驚いた様子はなく、納得しているようで。
「だって忍足先輩その日から急に機嫌良くなりましたから」
鳳くんが答えてくれた。
うわぁ、嬉しいような恥ずかしいような…
侑士先輩の方を見ると、先輩は顔をふせていてよく表情が読み取れない 。
でも耳まで赤く染まっていることはバレバレだ。
それを見たあたしもなんだか顔が熱くなってきて、あたしと侑士先輩は二人して顔をふせた。
「えーと、赤也お弁当…」
「あ、サンキュ」
だれかさんのせいで渡せなかったお弁当を赤也に渡し、あたしはほっと息をつく。
さて、帰るか…
あたしがくるりと校門のほうへ体を向けると、声がかかった。
「なまえ、もう帰るのか?」
赤也…これ以上あたしを苦しめる気なのか…
「洗濯物干してない、掃除してない、お風呂洗ってない、ご飯の用意してない…」
あたしがつらつらとこれからのあたしの仕事を述べると、赤也は顔を歪めた。
「あ゛〜わかったから!帰っていいから!」
あたしがこのまま今日の家事をしなかったらどうなるか思い浮かべたんだろう。
「じゃ、あたし帰るね。」
あたしがそう言うと侑士先輩が悲しそうな顔をした。
「そうか、なまえ帰るんか…」
「う…」
…!や、やめて!あたしを誘惑しないで侑士先輩…!
気持ちが侑士先輩のせいでグラグラと揺れていたとき、幸村先輩(と呼ばせてもらおう)が言った。
「赤也が帰ってから手伝えばいいじゃないか」
「え゛…」
赤也が明らかにいやだという顔をして、あたしは言う。
「いや、それは悪いよ。赤也は部活で疲れてるだろうし」
その言葉を聞いて赤也は呻った。
「なまえはいつもそうやって他人のことばっかりだよな。いい、俺も帰ったら手伝うからここにいろよ」
うわ、ひさしぶりに赤也がツンデレた。可愛いー…
「赤也可愛いー…」
思ったことが口から漏れてしまったみたいで、赤也は一気に顔を赤くした。
「なっ…!」
それから下を向いて何かブツブツ言っている。聞き取れないけど。
そんな赤也の頭を侑士先輩がギリギリと掴む。
「そうやな、切原が手伝う言うとるし、なまえもここにおり?」
あれ、侑士先輩の笑顔がどことなく黒い…?
ま、いいか。侑士先輩もこう言ってくれてるし、ちょっと見ていきますか。