波乱万丈人生記

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ふわふわ、夢特有の体が浮いている感じがする。


何もない、白い空間。

部屋なのか、と問われれば、そうではない。
白が無限に広がっていた。



上から声が降ってくる。

これまた形容しがたい声だった。


[お前は何を望む]


何を?

そんなこと決まっている。

大好きな人とずっと一緒に。それだけ。

あたしの頭の中に先輩の顔が浮かぶ。彼と、いつまでも。


[それは難しい願いだ]


何故?


[時空が違う]


時空?


唐突に、彼は漫画の登場人物だったことを思い出す。
ああ、何故あたしは忘れていたのだろう。
とても大切なことだったはずなのに。

きっと、彼と一緒に居るのが、彼の隣りにいるのが当たり前のことになっていて、そんなことはどうでもよくなっていたんだ。


さっきまで会話をしていた、誰とも知らないひとに尋ねる。




お願い、彼とずっと一緒にいたいの。
どうにか、方法はないの?


[絆を、も、っと、…]


だんだん、声がちいさくなって聞こえなくなる。

絆?絆って言ったの?

絆が何なの?


そう問いかけたかったけど、夢から覚めるあの感覚に抗うことは出来なくて、あたしはとうとうその言葉の真意を聞けなかった。





ぴちゅぴちゅと、小鳥がさえずる。空は真っ青に晴れ渡っていて、これ以上にいい天気など無いのでは、と思うほど。

だけど、あたしの目覚めは最悪だった。
いつもは朝にはすっかり忘れている夢の内容が、今日は鮮明に思い出せたから。
嫌な予感がして、仕方がない。

その予感通りにいけば、このままでは…


どうしよう、どうしよう、

学校に着いてからも不安は消えずにあたしの頭の中を埋め尽くしていた。



何故今頃になってあんな夢を見ないといけないのか。

あの夢が真実のものなら、あたしはどうしたらいいの?

ずっと、侑士先輩と一緒にいたいのに。



彼の隣りにあたしではない別の誰かが立つのが嫌で。

彼の愛を一心に受けるのがあたしではないのはもっと嫌で。

彼に一生会えなくなるのは一番嫌だった。



ここに来るまでは無かった気持ち。

誰かを愛することがこんなに苦しくて、そして幸せなことだって知らなかった。



ああ、このことを誰かに相談出来たらどんなに良いだろう。

そういえば、悩み事があったらいつも侑士先輩に相談していた。
今回ばかりは相談できないことだから。


夢くらいで悩まなくても、って言う人もいるかもしれない。

だけど、どうしようもない不安があたしに襲いかかる。
この夢は本当だと、本能が告げる。



彼のことをもっと知っていこうと思ったばかりなのに。

ああ、神様、あたしはどうしたらいいのですか…
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