何よりも甘いキスを。
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リズ君の火傷をお風呂場のシャワーで冷やすと、リズ君は小さく呻き声を上げた。
「痛い?痛いよね、ごめんね…。」
見ているのが痛々しくなり、リズ君に謝る。すると、リズ君はこう言うのだ。
「な、んでおねえちゃんがあやまるの…?おねえちゃんわるくないのに…。」
なんていい子なんだ。その健気さに胸を打たれる。
「お姉ちゃん、リズ君が苦しんでるのに何もしてあげられないから…ごめんね…。」
「おねえちゃん、ぼくにてあてしてくれてるよ?ぼく、うれしい…。」
そういって、満面の笑みで私の頬にちゅ、と可愛らしい音を落とす。流石、外国人。
へへ、と照れたような顔に私は癒された。
しかし、事態はそれほど甘いものではない。左側の頬から鎖骨にかけての火傷は思ったより深く、じくじくと膿みだしていたのだ。
跡が残っちゃうかも…
こんな可愛い顔に跡が残るなんて許せなくて、私はリズ君と共にお風呂場を出てリズ君の火傷に火傷用の軟膏を塗った後、知り合いの皮膚科に電話をした。
「あ、もしもし?みょうじですけど…。」
数回コール音がした後、がちゃ、と電話に出る音がする。
「まあ、なまえちゃん、久し振り!」
昔からの母の知り合いだった先生は、母が50という若さで亡くなった後も私に良くしてくれた。
「もう、大学生だものねえ、忙しいわよね。」
「ええ、それで今日は折り入ってお話が。」
「ええ、なにかしら?」
「あの、知り合いの男の子がひどい火傷を作っちゃって。今から見てもらえませんか?」
今は土曜日の夕飯時で、診察時間なんてとっくに過ぎている。
でも先生は快く了承してくれて、すぐに病院に向かうことになった。
(リズ君これ着て?私のTシャツだけど…)