何よりも甘いキスを。
□かぐや姫1
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ここ、どこ?
あの時、リズ君を抱きしめて、あまりにも眩しくなってしまった視界に堪えられず目を瞑った。
そして、ようやく目を開けられるようになったので視界をフルに活用しようと見開いてみたのだが。
……ここ、どこ?
見渡す限り、竹林。
もう少し先まで見てみようと、横たわっている体を起こそうと試みるのだが如何せん体が上手く動いてくれない。
寝返りさえ出来ない体に苛立ちを覚え、自分の手を目の前にもっていく。
そこでようやく私は異変に気がついた。
え?
声を出そうとしても、あーとしか音を出してくれない。
そして目の前にはぷくぷくとしたもみじの様な手。
そう、まるで。
赤ん坊のような。
うそ、でしょ。
口に出したくても、あーだのうーだの赤ん坊のぐずり声しか出てこない。
私は自分の絶体絶命の危機に愕然とした。
このまま動けなかったらどうなる?
おそらく頭からつま先まで赤ん坊の私が1日でもここに放置されていたら。
イコールそれは死を意味するだろう。
やばい。それはやばい。
誰かに見つけてもらわなければ。
そう思い私は先程にも増してあーうー泣き始めた。
早く、早く、誰か来て。
そんな思いが天に通じたのかもしれない。
しばらくすると人の良さそうな顔をした男の人がこちらへやって来たではないか。
チャンス!
申し訳ないが見かけ赤子の私はこの男の人のことを格好の獲物だと認識していた。
何分にも命がかかっているのだ、私の。
彼のことは鴨が葱を背負ってきたとしか思えなかった。
だから声を上げて泣いた。
その男の人にもわかるように先ほどよりも甲高く大きく。
とにかくこの赤ん坊の小さな体で出せる限りの声を張り上げて。
するとまあ、その顔に違わず人の良い男の人は私を抱き上げ、自分の家に連れ帰ってくれたのだった。