REBORN!
□霧の部屋と
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「う……」
腕の中で身動ぎした少女は、覚醒する様子はない。
スクアーロは、先ほどのマーモンの言葉にこの上ない魅力を感じていた。
事実、彼は困り果てていたのだ。
放り出すこともできずにこうやって連れて来たはいいが、これからどうしていいか分からない。
タダとは言われたものの、その相手がマーモンであることに若干の不安を覚える。
だが背に腹は代えられない。
スクアーロは自分に大丈夫だと言い聞かせ、覚悟を決めたようにマーモンへ視線をやる。
しかし小さな子どもはすでにおらず、ちょっと先をとことこ歩いていた。
「さっさとしなよ。ノロノロしてると、その分お金巻き上げるからね」
霧の部屋と
スクアーロはある程度歩いたところで、突然止まる。
そして大声で言った。
「う"お"ぉい、マーモン!」
しかしそこには扉も無く、ただ壁が続くのみ。
窓に映る外も変わりない。
まるで絵か、写真のような無機質な印象を受ける。
「いい加減、入れやがれぇ!」
この人は一体どうしたのだろうかと訝しげに見上げると、そこには真面目な表情のスクアーロ。
誰に言っているのだろうと、彼の視線を辿ればそこには。
目を疑う光景があった。
「え、何これ」
壁がぐにゃりと歪んで、みるみるうちにドアが生成されていく。
目の前に広がっていた先の見えない長く続く廊下は、いつの間にか突き当たり。
狐か狸に化かされた気分である。
怖くなってスクアーロの手を握り直すと、彼はちらりとこちらを見た。
「あいつなりの侵入者対策だ。ある程度歩いたところで声出せば、すぐに入れてもらえる」
進むにつれて濃くなっていたはずの霧は、もう無い。