銀魂

□血の香りがする
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「言っただろ。もし怖いなら、俺の後ろに隠れていろと」


持っていた刀をもぎ取られる。
はっとそれに視線をやると、晋助は刃から血を拭っていた。


「後ろにいりゃ、命取られない程度に守ってやる」


真っ赤な刃から鉄色へ。

私は首を横に振って、戻った刀を受け取る。


「いいよ」

「可愛くねぇ奴」

「可愛かったことなんてありません」


帰ったら手入れしないとなとか考えながら刀を鞘へとしまう。
ぱちんと音がした。


「……私は、晋助と限り無く近い場所にいたいから」


まだ手に残る血に体が震えて、それを隠そうと白い布で擦る。
赤くなっても肌が削れてもいいと思った。


「前から思ってたけど馬鹿だな」

「晋助には言われたくないけどね」

「そりゃどういう意味だ」

「そのまま」


口答えをすると目の前に影ができた。
驚いて上を向けば、着物の袖着物の袖で頬をなぞられる。


「俺は、お前がそう言うなら何も言わねぇが」


晋助の袖が赤くなった。
血が付いても気にならない程の派手な着物だが、晋助はそれを嫌がっていたはずだ。

そう思い出して首を振って拒否すると、今度は痛いくらいに腕を掴まれる。


「怖いなら、不安なら、俺に言え。お前の言葉なら聞いてやる」


再び袖で血を拭われる。
今度は唇をなぞって、晋助はふと笑った。
何、と疑問を含んだ視線を向けると、そっと顔が近付いてくる。

唇が重なった。


「っ……!?」

「おーおー、顔真っ赤」


にやにやしながらからかい、笑う晋助に私はそっぽを向いた。
けれど血の昇った顔全てを隠せるはずがなくて。





その照れたような仕草が晋助を喜ばせていたらしい。
少し後に本人がとても楽しそうに語ってくれた。

私はまだ晋助のために人を斬っていた。
けれど昔に比べれば返り血は浴びなくなり、恐怖も薄れた気がする。
そう、それは。


「ねぇ、」

「あ?」

「いなくならないでね」

「は?」

「恐怖も全部、晋助の為なら良いものに変わるから」


全てはアナタの為。


「お前こそ、俺の側から離れるんじゃねぇぞ」








アナタと一緒なら、例え血の香りが取れなくてもいいのです

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