銀魂

□落とし物探索
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強張った表情がふわりと解けて、山崎はどきっとした。


「えっと、指輪を……」


寂しげに指を絡ませて言うと、彼女の視線は再び地面へと落とされた。
どうやら大事なものらしい。


「指輪……。どんな?」

「青い石がついたもので、その、形見なんです」


……婚約指輪とかの類いじゃないのか、良かった。
そこまで考えて山崎は頭を振った。
どうした俺、何を考えているんだ!


「ここで?」

「はい、落ちて、転がってしまって……え?」


彼女がしゃがみ込もうとした瞬間、山崎は何故か串団子を差し出した。
出された本人は目を見開いて、何ごとかとそれを眺める。

山崎は事も無げに言った。


「ちょっと持っていて頂けますか?俺のお昼なんですよ」

「え、あ……」


まだ状況を理解してはいないようだったが、彼女は戸惑いながらもそれを受け取る。
すると山崎はおもむろに地面へと手を付いた。


「あ、あの!」

「何ですかー?」


その行動に焦ったように声をかける彼女に、山崎はのんびりと返事をする。

視線は地面を這ったままだ。
膝を付いて、手を付いて。
自動販売機の下も覗き込む。


「何やって……」

「ん?あぁ、お礼ですよ」


困ったようにオロオロする彼女を下から見上げる。
山崎の答えに、表情がもっと困ったものになった。


「お礼って」

「ほら、荷物持ってもらってます」


指が串団子を指した。


「え、でもこれは」

「あ!」


彼女の言葉を遮って、山崎は声を上げた。

その視線の先にはきらりと光るもの。
太陽の光を反射して青く輝いていた。
綺麗だなと思う。

目で確認した彼は立ち上がって急いでそれを拾いに行く。


「これ、ですよね!」

「そ、そうですっありがとうございます」


指輪を差し出すと、彼女は泣きそうになりながら喜んだ。
山崎はそれを見て嬉しくなって、照れたように微笑む。

恋とは、どこからやってくるか予想などつかないものである。







一目惚れしちゃった退

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