銀魂
□そして私は恋をする
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追いかけて追いつくなら、いくらでも追ってあげる。
泣いて引き止められるなら、いくらでも泣いてやる。
恋をして振り向いてくれるなら。
そして私は恋をする
「うーん、これでいいかなー」
私はスーパーで小さく呻いてみた。
勿論買い物には一人で来ていて、反応を返してくれる人はいない。
だがそんなことは関係ない。
今私は、人生で初ともいえる人への誕生日プレゼントを選んでいる最中なのだから。
さて、一応補足はしておくが、別に家族や友人へのプレゼントが初めてなわけではない。
好きな人へ送るというのが初めてなだけである。
だから何を送っていいのかさっぱり分からないし、かといって直接聞くこともできない。
だって例え訊いたって、絶対こう言うに決まってる。
俺は気持ちだけで十分だよ、むしろお妙さんから欲しいなぁお妙さんにさり気なく誕生日のこと伝えてくれないか。
……手に持っていたバナナの房を思わず棚に戻す。
悲しくなってきたぞ。
だが、例え振り向いてはもらえなくとも少しでも気にかけてもらえれば嬉しい。
近藤さんは傍から見ている私に言わせてもらえば、お妙さんと結ばれる可能性などゼロに等しいから。
せめてもう少し普通に迫れば望みはあったのかもしれないが、今更無理だろう。
そんなこんなで、私は近藤さんがお妙さんを諦めるのを心待ちにしている女なのである。
これだけ聞いていると最低な人間にしか思えないが。
こちらは結構必死な感じなので関係ない。
他人に知られているわけでもあるまいし。
「何でぃ、バナナ戻しちまうのか。近藤さんなら喜ぶと思いますぜ」
知られているわけでもあるまいし。
本日、二回目。
「沖田!!」
自分が今スーパーにいることなどすっかり忘れて、思わず防御体制を取る。
足元に置いてあったカゴが足と接触して意外と大きな音を立てた。